猫の祖先はいったいどのような動物だったのでしょうか?生物としての歴史だけでなく、人間とのつながりについても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
猫と犬の祖先はもともと同じ動物だった!?
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あまり知られていませんが、猫と犬の祖先はもともと同じ動物だったといわれています。その動物は「ミアキス」という名で呼ばれ、猫や犬だけでなくすべての肉食動物の祖先にあたると考えられています。
ミアキスは体長が約20~30cmほどで、見た目はイタチのような姿をしていたようです。これはヨーロッパから出土した化石から判明したものであり、木の上を寝床として小動物を捕食する肉食獣だったとされています。
その後ミアキスからさまざまな種へと系統が分かれていき、約4300万年前に現在の猫の祖先にあたる「プロアイルス」が誕生しました。
プロアイルスについてはあまりよくわかっていませんが、現代の猫のようなスラッとした姿ではなく、ジャコウネコのように胴長短足だったのではないかと化石による解析から考えられています。
猫と人間は9500年前にはすでに共同生活をしていた?
猫と人間の歴史がどこから始まったのかについては諸説あります。そのなかでも、人間に飼いならされた猫、俗にいう「イエネコ」がいつから存在していたのかについては多くの謎が残っています。
これまでの研究では、3500年前のエジプトの壁画から人間と猫が共存していた様子を確認できたことから、当時の人々が現代人のように猫をペットとして飼育していた(家畜化がおこなわれていた)と考えられていました。
しかしこの説を覆す発見が2004年にみつかります。その内容は、地中海に位置するキプロス島にある紀元前7500年ごろの墓から、人骨とともに埋葬された猫の骨がみつかったというものです。
この発見により、これまで人間が猫を家畜化するようになったのは3500年前のエジプトだとする説から大幅に修正され、9500年前にはすでに人の手によって管理・飼育されていたことが証明されました。
※キプロス島にはイエネコの祖先にあたるヤマネコは存在していなかったことから、人々が愛玩目的でヤマネコを島に持ち込んだのだと推測されています。
世界における猫と人間の歴史
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世界における猫と人間の歴史について、3つの話をご紹介します。
古代エジプトでは神として崇められていた
古代エジプトにおいて猫は神聖な動物として崇められていました。とくに雄ネコは太陽神ラーの象徴とされ神格化されていたようです。
死んでしまった猫はミイラ化して埋葬されるのが一般的とされ、飼い猫を失った飼い主は眉毛を剃り落としてその死を悼んだといわれています。
大航海時代に各大陸へ持ち込まれる
15~17世紀半ばにあたる大航海時代になると、猫はさまざまな大陸へ運ばれていくことになります。
1500年代にはカナダ、1600年代にはアメリカなど、多くの国々に運ばれていった猫たちは、19世紀頃になると世界中でその姿をみることができるようになりました。
伝染病の急拡大により評価が高くなる
18世紀半ばから19世紀にかけて、ヨーロッパでは伝染病の拡大防止が急務とされており、原因であるネズミの処理が重要事項となっていました。
その際にネズミを退治する救世主として脚光を浴びたのが猫です。ところが、当時ヨーロッパ各地で猫は「悪魔の動物」というイメージが浸透していたため、毛嫌いさる傾向にありました。
しかし、そのネズミ駆除能力の高さから人々の認識が変化していき、徐々に猫に対する評価が見直されていったようです。
日本における猫と人間の歴史
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日本における猫と人間の歴史について、3つの話をご紹介します。
弥生時代にはすでに猫と生活していた
長崎県にあるカラカミ遺跡から紀元前3世紀ごろのイエネコの骨が発見されたことで、これまで有力とされてきた、奈良時代に中国から伝来したという説が見直されるきっかけとなりました。
発見された骨からは丁寧に埋葬されたあとがみられなかったことから、当時の人々は猫をネズミ駆除に活用していただけで、現代のようなペットという感覚はなかったのではないかと考えられています。
上流階級にペットとして愛された平安時代
平安時代になると、猫は上流階級に愛されるペットとして重宝されます。
なかでも愛猫家として知られた宇多天皇は、愛猫の様子を日記に記録するほどでした。
そのほかにも「枕草子」や「源氏物語」など、有名な書物にも猫の様子を描いた記載がみつかっていることから、当時の人々が猫を大切な動物として尊重していたことがわかっています。
妖怪のモチーフになった鎌倉時代
鎌倉時代に突入すると、町中で野良猫の姿がみられるようになります。そのことから、平安時代にあった「猫は大切な動物である」という認識が薄れていったようです。
さらに、中国から伝来した猫にまつわる奇妙な話が広まり、人を食い殺す「猫股(ねこまた)」や「化け猫(ばけねこ)」などの存在が徐々に定着していきました。
有名な随筆である「徒然草」にも化け猫についての記述がみられることから、人々が猫に対していぶかしい気持ちを持っていたことがわかります。
猫と人間の歴史はこれからもずっと続いていく
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今回は猫の祖先にフォーカスをあて、人間と猫の歴史をご紹介しました。
人間と猫がともに生活するようになってから長い月日が経ちましたが、その関係が現在も続いているのは嬉しいことです。
これまで積み重ねてきた長い歴史と同じように、これからも人間と猫の絆は続いてきます。あなたと愛猫が過ごすこの時間もまた、長い歴史のひとつとして重要な意味を持っているはずですよ。
著者情報
U.SHOHEI
父親が犬のブリーダーをしていたこともあり子どもの頃から犬に囲まれた生活を送る。
現在は趣味の動物園・水族館めぐりから得た知識をもとに幅広く動物に関する記事の執筆をおこなっている。
得意な生物は、犬・猫・海洋生物・エキゾチックアニマル。