犬の聴覚は人間より優れている?聴覚の秘密と知っておきたい聴覚障害

動物はその生態から人間にはない高度な感覚器官を持っています。犬の持つ感覚器官で最も優れているのが嗅覚なのは有名ですが、聴覚はどれほどの能力を持ち合わせているのでしょうか?そこで今回は、犬の聴覚についてその秘密に迫ります。 2021年12月30日作成

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犬の聴覚は人間より優れているといわれています。ではどれくらい違いがあるのでしょうか?犬の聴覚の秘密と以外と知らない聴覚障害について理解しましょう。

犬の聴覚は人間より優れている 

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犬の聴覚は人間よりもはるかに優れています。その理由は、聞き取れる音の振動数と音源定位能力の違いにあります。

音の振動数とは発生した音を聞きとれる範囲をしめしており、人間の場合20Hz~2万Hzの間だとされています。しかし、犬はそれよりもはるかに広い16Hz~12万Hzの範囲で音を感知できます。

また、音源の方向を知る能力である音源定位においても、人が16方向なのに対し、犬は32方向からの音をキャッチできるのです。

これは、犬の耳が人間のように固定されたものではなく、左右それぞれ17個ずつの筋肉によって音の発生源へ自在に動かせることから実現した能力です。このような耳の仕組みを「運動耳」とよびます。

犬が好む音と嫌がる音 

犬が好む音と嫌がる音にはどのようなものがあるでしょうか?
それぞれみていきましょう。

犬が好む音 

犬は高い音を好み、低い音を苦手としています。
この高い音が好みというのは、少し高い程度の声で飼い犬に話しかけるのを想定しています。キンと突き刺さるような高音が好きというわけではないので注意が必要です。

少し高い音以外にも、ブーブーと鳴るおもちゃ、エサ袋を開ける音、飼い主の声など、過去にあった嬉しい体験を連想させる音を好みます。

この特性を利用し、犬のしつけをする際、指示通りの行動ができたときには少し高めの声で褒めてあげると「飼い主さんが喜んでいる!」と犬も認識してくれます。

反対に犬が悪いことをして叱るときには、低い声で短く叱るのがポイントです。

犬が嫌がる音 

嫌がる音の代表的なものとしてあげられるのが、雷・花火・掃除機・ドライヤーなど、強烈で耳を突くような大きな音です。

このなかでも雷を怖がるのは野生時の名残だといわれており、野生下における急激な気象の変化は命の危機につながる恐れがあるため、特に敏感になるようです。

近年では室内で飼育されている犬も多くなっていることから、掃除機やドライヤー、インターホンなど、さまざまな生活音に慣れさせる訓練が必要とされています。

子犬期は犬が社会生活を学ぶ時期(社会化期)にあたるため、そのころから継続して多くの音を聞かせるようにすると、音に対する耐性がつきやすいといわれています。

社会化期に苦手となった音を克服させるのは難しいため、犬が音に対してトラウマを持たないよう、この時期の飼育はとくに注意が必要です。

犬種によって聴覚に違いはあるの? 

これまでは高い周波数の音を聞き分けられる犬種とそうでない犬種がいるといわれていましたが、近年の実験によって犬種による聴覚の違いはないという結果が出たようです。

しかしながら、この実験で使用された犬種は数種類であり、すべての犬種について実験がおこなわれたわけではないため、今後の研究によっては結果が変わるかもしれません。

また一方で、立耳の犬種のほうが垂れ耳の犬種にくらべ聴覚が優れていると主張する説もあります。

野生下で生活していた犬の祖先は、みずからの危険を回避するための材料として、音による情報を重視していました。そのため、当時の個体はすべて立耳です。

しかし、身の危険の少ない人の管理下で生活するようになってから、退行現象による耳の筋肉のゆるみが発生し、徐々に垂れ耳の個体が増えていったとされています。

このような経緯から、立耳の犬種のほうが高い聴覚を持っているとする説が誕生したと考えられます。

この症状が出たら注意!犬の聴覚障害とは 

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人間とおなじように、犬にも聴覚に障害が発生することがあります。
具体的にどのような症状が出るのか、いざというときのために知っておきましょう。

犬の聴覚障害の症状 

犬の聴覚障害であらわれる症状にはこのようなものがあります。

・声をかけても反応しない
・大きな音を気にしない
・近づくと驚いた様子をみせる など

言葉を話せない犬の聴覚障害を確かめるのは容易ではありません。
愛犬の音に対する反応から状態を推測し、気になる態度をしめすようなら動物病院で検査してもらいましょう。

犬の聴覚障害の原因 

犬の聴覚障害には、「先天性難聴」と「後天性難聴」があります。

●先天性難聴
先天性難聴とは、遺伝によって引き起こされる聴覚障害のことです。
生まれたときから耳が聞こえない、生まれてからしばらくして聴力が低下するケースなど、個体によって違いがあります。

●後天性難聴
後天性難聴とは、外耳炎などの病気、老化による耳の機能低下などが原因として発生する聴覚障害です。
原因は多岐にわたり、抗生物質の副作用などによって引き起こされるケースもあります。

犬の聴覚障害の予防法 

先天性難聴は生まれつきの症状であるため、生活習慣による予防は不可能です。
ですが、後天性難聴であれば、犬の耳を清潔に保つ、定期的に健康診断を受ける、過度なストレスがかからないよう配慮する、などの方法が予防に効果的だとされています。

犬の聴覚障害の治療法 

聴覚障害の治療は困難を極め、病気などによる一時的な閉塞が原因の聴覚障害であれば治療による改善が期待できます。しかし、ほとんどの場合はいちど聴覚障害をわずらってしまうと完治は難しいとされています。

聴覚は犬が生きるうえで大切な能力のひとつ 

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犬の聴覚は人間をはるかに凌ぐとても優れた能力です。
だからこそ、飼育する飼い主は愛犬が音による恐怖を感じぬよう配慮しなくてはいけません。

トラウマを植え付けてしまうことがないよう、日々の生活に気を配ってあげましょう。

著者情報

U.SHOHEI

父親が犬のブリーダーをしていたこともあり子どもの頃から犬に囲まれた生活を送る。

現在は趣味の動物園・水族館めぐりから得た知識をもとに幅広く動物に関する記事の執筆をおこなっている。

得意な生物は、犬・猫・海洋生物・エキゾチックアニマル。

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