猫の耳が桜の花びらのようにカットされてるのはなぜ?TNR活動との関係性

野良猫の中には、耳の先端がV字にカットされている子がいますね。これは、意図的なもので、産まれた時からそうなっているものではありません。今回は、猫の耳がカットされている理由や、その活動を行うTNR活動についてご紹介します。 2021年12月23日作成

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耳がカットされている猫は「さくらねこ」と呼ぶ

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耳がカットされている野良猫は、さくらねこと呼ばれるのが一般的です。これは避妊・去勢手術をした証しで、多くはボランティアの手によって一度捕獲され、避妊・去勢手術をした後にまた元の場所に戻すという「TNR活動」が関わりましたよ、というサインなのです。

こうすることで、野良猫が繁殖し殺処分されてしまうことをできるだけ防ぎ、飼い主のいない猫が一代限りで命を全うできるようにしています。

TNR活動とは?

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TNR活動とは、2005年よりどうぶつ基金が主となって行っているどうぶつ愛護事業の1つです。TNRは、Trap(捕獲)、Neuter(不妊去勢手術)、Return(元に戻す)という言葉の頭文字からできた言葉です。この活動を行った目印として、耳にV字あるいは水平にカットを施し、誰が見ても一目で分かるようにしています。

この目的は、野良猫の繁殖を防止することにあります。地域の猫としてできるだけ苦情を受けずに一代限りの命を全うでき、殺処分されてしまう猫の数を減らそうという狙いがあるのです。

もともと、野良猫の保護や殺処分を減らすために活動する人はいますが、個人あるいは従来の地域猫活動では予算の関係などもあり十分に対応できないことも多々あったようです。しかし、どうぶつ基金が主となりこの活動を始めたことで、できるだけ早い段階で猫を保護し対処することができたり、公園や大学など一般の人では対処が難しい場所での活動も進められることとなりました。

その甲斐もあってか、昔に比べるとずいぶんと猫の殺処分数は減り、全国的に知られる活動になってきているのではないでしょうか。

猫の繁殖力

TNRの活動が活発になっている理由の一つには、猫の繁殖力が関係しているとも言えるでしょう。猫は繁殖力の強い動物です。犬などの哺乳類は「自然排卵」で、雌が排卵する前後数日に交尾をした場合、受精する形態になっています。ところが、猫の場合は「交尾排卵」といって、交尾の刺激で排卵する仕組みになっているため、交尾をすればほぼ確実に妊娠できる点で繁殖力が強いとされているのです。

また、猫の発情期は主に春と言われていますが、実は一年中いつでも妊娠できることが分かっています。つまり、厳冬期や酷暑であっても、環境や栄養状態などの条件が揃えば妊娠できるのです。

猫の妊娠期間

猫の妊娠期間は約2ヶ月(60日~68日) 前後です。一度に出産するのは4頭~8頭と言われ、安産であるとも言われています。出産後は授乳期がありますが、それが終わればすぐに妊娠できることになります。

また、出産した子猫に関しても、生後6ヶ月頃から妊娠が可能となるため、年に2~4回の出産が可能です。1年後に雌猫が出産する数は20頭以上という環境省の報告もあるほど、繁殖力が強い動物であることがうかがえます。

以上のようなことから、TNR活動がどれほど重要なことであるかお分かりいただけるでしょう。

「さくらねこ」と呼ばれるようになったのはいつから?

耳先をカットされた猫を、さくらねこと呼ぶようになったのはいつからなのでしょうか。それは、2012年に行われた沖縄県石垣島での大規模一斉TNRの時からだそうです。この大規模一斉TNRは、どうぶつ基金が行った活動で、その理事長と石垣市長が会談したときに発案された呼び名のようです。

今や全国的に知られる、さくらねこという呼び名は、沖縄県で生まれた言葉なんですね。それまでは、さくらねこではなく、耳先カット猫と呼ばれていたそうですから、愛らしい名前が付いて良かったですね。

耳先カットの目印は本当に必要?

誰もが一目で分かる耳先カットの目印、見方によっては、痛々しいからかわいそうだと思われるかもしれません。しかし実際は、手術中の麻酔が効いている間に行われるため痛みや出血はほとんどないと言われます。

また、この目印があることは、既にさくらねことして一度は保護され、避妊・去勢手術を終えたことを教えてくれるという大きな役割があります。実際、目印がなかったために過去に避妊・去勢手術を受けているにも関わらず、もう一度捕獲され麻酔されてしまった猫も少なくないといいます。

猫にとっては、知らない人に捕獲され、麻酔というリスクを2度も背負うこととなり、決して良いことではありませんし、もしこの目印がないままだった場合、またこれからも同じリスクを負う可能性だって十分にあるのです。

さらに、こうした二度手間をなくすことで、TNR活動に使える資金を無駄にせず、できるだけ多くの野良猫に役立てることもできます。このような理由から、誰が見ても分かる目印が必要なのです。

猫の殺処分はどのくらい?

環境省が発表している統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、平成31年度の猫の殺処分数はおよそ2万7千匹。そのうち、離乳していない子猫は約1万8千匹にものぼるそうです。もちろん、引き取られた猫の全てが殺処分されているわけではなく、収容される猫の数は5万3千匹を超える中、約半数は返還あるいは譲渡されているそうです。

それでもやはり、殺処分数は多いなと感じる方も多いでしょう。しかし、平成16年度のデータを見ると、猫の殺処分数はおよそ24万匹となっています。今とは比べ物にならないくらい、多くの猫が強制的に命を落としていました。それから徐々に殺処分数は減っていき、今の状態になっているようです。

さくらねこは自分の家に迎えても良い?

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もし、あなたが野良猫を一匹でも家猫にしてあげたい、猫を迎えたいけど出来ればペットショップからではなく保護をしてあげたいと考えるとき、たまたま出会った猫がさくらねこだった場合、少し戸惑うかもしれません。

さくらねこを見たとき、「もしかすると誰かがお世話をしている猫だから勝手に迎えてはいけないのかな」と思う方も多いといいます。確かに、さくらねこは誰かがどこかでボランティアとして関わり、食事も与えてもらっているのかもしれません。しかし、ずっと外にいるのであれば、野良猫という存在に変わりはありません。

外での暮らしは、とても過酷で猫にとっては危険も多いです。台風の日、雨の日、雪の降る寒い日、どんな日も乗り越えなければなりません。そして、食事がきちんと食べられるかどうかも分からない日々は、家猫に比べるとはるかに厳しい状況だといえます。

さくらねこは、避妊・去勢手術は住んでいるものの、他の野良猫とほとんど変わらない状況下で生活をしています。誰かに家族として迎えられれば、それに越したことはありません。外で暮らすさくらねこが、どこで誰にご飯をもらっているのかを把握することは、とても困難です。もし、道端で会っているうちに自然と懐き、家に迎えても良いと思われるのであれば、ぜひお迎えの用意をして受け入れてあげてはいかがでしょうか。

猫の殺処分をなくす活動には誰でも参加できる

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さくらねこは、家猫ではないものの、誰かのサポートを受けて不妊手術を済ませた猫のことであるとご紹介しました。猫は大好きだけど飼えない事情がある人、猫の命を少しでも守ってあげたいと考える人などは、TNR活動への募金を検討してみてはいかがでしょうか。公益財団法人「どうぶつ基金」への寄付や、ネット募金などを通じてその活動を支援することができます。

著者情報

こば

小さな頃から保護された犬や猫を迎えて生活。現在は黒猫の「ジジ」に翻弄されながら、発見と感動の毎日を送っています。
実体験を振り返りつつ、飼い主さんの役に立つような情報を分かりやすく記事にすることを目標にしています。

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