犬があくびをするのはどうしてでしょうか?生理現象としてだけでなく病気の兆候としてあらわれる場合もあるため、しっかりと犬のあくびについて理解しておきましょう。
犬があくびをする理由は?
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犬があくびをする主な理由としては以下の3つが考えられます。
このなかでも「カーミングシグナルとしての行動」「体調不良の兆候」のふたつは、犬が健やかに生活するうえでとても重要だといえます。
「たかがあくび」などと思わず、その主な原因を知っておきましょう。
眠気からくる生理現象
人間を含めた動物がなぜあくびをするのかについて、その理由には諸説あるものの、一説として脳の血流を活性化させるためだといわれています。
これ以外にも、脳を緊張状態からリラックスへ、リラックスから緊張状態へ移行するスイッチの役割があると考えられています。
以上のことから、犬も人間と同じように生理現象のひとつとしてあくびをするようです。
カーミングシグナルとしての行動
カーミングシグナルとは、自分や相手(人間やほかの動物など)を落ち着かせるために犬が取る行動のことです。「落ち着かせる=カーム(calm)」と「合図=シグナル(signal)」を組み合わせてこう呼ばれています。
カーミングシグナルについては次章で詳しく解説しますが、簡単に説明すると、「犬がおこなうボディランゲージの方法を指す言葉」と認識しておけば問題ないでしょう。
体調不良の兆候
犬が体調不良に陥ると、あくびの回数が増えるといわれています。もちろん、個体による違いはあるでしょうが、あくびの増加とともにその他の異変(下痢・嘔吐など)がみられる場合は、獣医師による診察が必要です。
カーミングシグナルとしてのあくびとは?
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先述したように、カーミングシグナルは自分や相手(人間やほかの動物など)を落ち着かせるために犬が取る行動のことです。
さらに細かく説明すると、犬が緊張状態にあるとき、(何かを)やめてほしいとき、などによくみられるといわれています。
カーミングシグナルにはあくび以外にも、片足を上げる、地面のニオイを嗅ぎまわる、お尻を向けるなどがあり、その数は27種類におよびます。(※カーミングシグナルの数を25種類とする説もあり)
カーミングシグナルからくるあくびの一例として、犬がほかの犬と喧嘩をした直後や飼い主に怒られたあとなどが挙げられ、相手に対して「もうやめてよ」「落ち着いてよ」と伝えています。
不安や恐怖を感じた際に自身を落ち着かせようとあくびをするケースもあるため、愛犬が頻繁にあくびをしているようであれば、不安や恐怖を感じるような状況にないか確認してあげましょう。
犬のあくびからみえる注意すべき体調不良の兆候とは?
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犬のあくびは病気や体調不良の症状としてあらわれるケースがあります。この章では、あくびから考えられる注意すべき体調不良の兆候についてみていきます。
貧血
貧血は中毒症状や腫瘍、ウイルス感染などさまざまな理由で発生します。貧血になると、舌・歯茎が白っぽくなる、食欲が低下する、落ち着きがなくなるなどといった症状がみられます。あくびも貧血の症状のひとつなので、あくびの回数が極端に増えたという場合には、ほかの症状が出ていないか合わせて確認することが大切です。
低血糖
低血糖は寄生虫による感染や腫瘍などが原因で発生します。低血糖に陥ると、ぐったりする、食欲が低下する、けいれんを起こすなどの症状がみられます。下痢や嘔吐も主症状としてあらわれやすいため、あくびの回数だけでなくこれらの症状が出ていないかのチェックも重要です。
歯や口周りの病気
歯や口周りの病気によってあくびが引き起こされるケースもあります。エサを食べにくそうにしている、口が開きづらそうなど、犬が口周りを気にしているようであれば歯周病などが原因となる痛みが出ているのかもしれません。
歯や口周り(口腔内含む)は、素人目では状態をよく判断できませんので、気になる行動があれば動物病院で診察してもらいましょう。
てんかん
てんかんとは、全身のけいれんや意識障害などが発作的に繰り返される病気のことです。現代の獣医学でもてんかんが発症するメカニズムは解明されていません。
てんかんの症状としては、けいれん・意識障害・あくび・よだれが増える、顎を震わせるなどがあります。
てんかん発作は時間経過によって治まることがほとんどです。ただし、あまりにも発作時間が長いようであれば、かかりつけの動物病院へ連絡し、その場でできる対処方法を教えてもらいましょう。
うつ病
人間だけでなく犬もうつ病になるといわれており、その症状のひとつがあくびとされています。
うつ病の主な原因として考えられているのが過度なストレスであり、問題行動の増加や自傷行為、下痢や嘔吐などの体調不良がみられるようになります。
犬は人間のように言葉で気持ちを説明できません。そのため、うつ病の診断はとても難しいといわれています。
愛犬にうつ病の症状がみられるようであれば、一度かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
愛犬のあくびを観察するクセをつけましょう
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今回は犬があくびをする理由について解説しました。
あくびはただの生理現象としてだけでなく、犬の気持ちをあらわすバロメーターのひとつとして、さらに体調不良を示す兆候としての役割を持っています。
すべてを正確に見極めるのは困難ですが、愛犬の状態を普段からしっかりと観察していれば、ちょっとした異変にもすぐに気付けるはずです。
愛犬の気持ちや健康状態を把握するためにも、これからはできる範囲であくびを観察するクセをつけましょう。
著者情報
U.SHOHEI
父親が犬のブリーダーをしていたこともあり子どもの頃から犬に囲まれた生活を送る。
現在は趣味の動物園・水族館めぐりから得た知識をもとに幅広く動物に関する記事の執筆をおこなっている。
得意な生物は、犬・猫・海洋生物・エキゾチックアニマル。