猫が飼い主から逃げようとするのには理由があります。愛猫とより良い関係性を築くためにも、正しい接し方について学んでおきましょう。
猫は4つの距離感のなかで生きている
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人間にも他人に近づかれると不快に感じるパーソナルスペースという概念があるように、猫にも相手との親密度によって4つの距離感が存在しているといわれています。
猫が持つとされる距離感、「個人的距離」「社会的距離」「臨界距離」「逃走距離」の4つについて、それぞれどのような意味があるのかみていきましょう。
個人的距離
個人的距離とは、気を許した相手のみ近づくことのできる範囲であり、4つの距離感のうちで最も猫自身に近いものです。
例をあげると、猫に信頼されている飼い主や同居するほかの猫(ほかの動物)などが侵入を許される範囲だといえます。
猫がくっついて添い寝したがるようであれば、飼い主を信頼し個人的距離への侵入を許していると考えてよいでしょう。
社会的距離
社会的距離とは、顔見知り程度の間柄で接する際の距離感です。
この距離感であれば、猫に近づいても警戒や威嚇行動を取られることはほとんどありません。
しかし、個人的距離と比べると猫が完全に気を許しているとはいえないため、警戒心の強い個体であれば、近づくと逃走することもあるでしょう。
臨界距離
臨界距離とは、見ず知らずの相手(人間、動物問わず)が近づいてくると、威嚇や攻撃行動を取り始める距離感のことです。
猫が自己防衛の本能として確保したがる距離であり、人間やほかの動物に慣れていない野良猫などによくみられる距離感です。
逃走距離
逃走距離とは、その名の通り相手から逃げきれる距離感のことです。逃走距離はおおよそ2mだといわれており、その範囲内に見知らぬ相手が侵入すると逃走を試みます。
見知らぬ猫に対して急に逃走距離より内側に入ってしまうと、攻撃される危険もあるため、できるだけ刺激しない範囲で接するようにしましょう。
猫が飼い主から逃げるのはどうして?
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猫が飼い主から逃げる理由はさまざまです。いくつか考えられるものをご紹介しますので、自身の行動が当てはまっていないか確認してください。
人慣れしていない
猫が人に慣れていない場合も飼い主から逃げる原因となります。例えば、保護した直後の野良猫や子猫を家に迎えた直後などが代表的な例です。
猫は成長にしたがって独立心が強くなっていくため、個体によっては、迎え入れてから時間が経っても飼い主に近づかないケースもあります。
とはいえ、多くの場合は少しずつ人に慣れていく過程で距離感も縮まっていくものなので、とくに心配しなくても大丈夫です。
ニオイが気になる
猫はニオイに対しとても敏感な反応を示します。例えば、タバコや香水のような刺激の強いニオイを嫌う傾向にあります。
愛猫と接する前はタバコや香水を控え、できるだけニオイが発生しない状態を作りましょう。
≪補足≫
柑橘系やアロマの香りは猫に有害な物質を含んでいることがあり、最悪の場合、中毒症状を引き起こします。愛猫が近づかないようしっかりと管理しましょう。
大きな音や声を出すから
日頃から大きな音や声を猫の前で出していると、それにビックリして逃げてしまうことがあります。
人間もそうですが、急に大きな音が聞こえたら身構えてしまうものです。それは猫も同じですので、愛猫がビックリしないよう注意して接してください。
無理やり触れる・抱きかかえようとするから
嫌がっているにもかかわらず、無理やり触れる・抱きかかえるなどの行動を取ると、飼い主を毛嫌いするようになり、捕まらないよう逃走を試みます。
これが日常的になると動物病院などへ連れていく際に苦労するため、愛猫が嫌がる素振りをみせるようなら無理強いは避けましょう。
恐怖体験など過去のトラウマ
虐待や育児放棄など、過去に怖い体験をしたトラウマがあると、飼い主(人間)から逃げようとします。
心の傷を癒すのには時間がかかります。もし、あなたの愛猫が過去のトラウマから恐怖心を抱いているようであれば、時間をかけて一緒に乗り越えてあげてください。
愛猫とより良い関係を築く方法は?
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愛猫とより良い関係を築くうえで気をつけたいポイントをご紹介します。
多くの愛猫家のみなさんであれば問題ないと思いますが、復習感覚でご覧ください。
適切な距離感で接する
猫も感情を持った動物ですので、四六時中ベタベタくっつかれるのをあまり好みません。そのため、付かず離れずの適切な距離感で愛猫と接するよう心がけてください。
遊んでほしい、なにかしてほしいなど、なんらかの理由があれば猫のほうから近づいてきますので、その際はきちんと対応してあげましょう。
目をみつめすぎない
動物の多くは視線によって相手に敵意を示す場合が多くあり、それは猫も例外ではありません。
目をそらす・まばたきをするなど、猫と視線が長時間合わないようにしましょう。
普段より少し高い声で接する
猫は低い声が苦手だといわれています。そのことから、男性より女性が好かれやすいという話もあるほどです。
愛猫と接する際は、普段より少し高い声で名前を呼んであげるようにしてください。
焦らずタイミングを待つ
猫に限らず動物を飼っていると、飼い主の思う通りに動いてくれないモヤモヤがどうしても募ります。
だからといって、無理に思い通りの行動を取らそうとしても、それは愛猫との関係を悪くするだけです。
定期的なしつけやコミュニケーションを通じて、焦らず少しずつ行動の改善を施していきましょう。何事も時間をかけてタイミングを見計らうことが大切です。
撫でる時に知っておきたい注意点
猫と仲良くなりたいという気持ちばかりで、撫でていないでしょうか。猫が撫でてもらうと喜ぶ場所は、首や耳の裏などです。これらは自分でケアできないこともあり、撫でると喜ぶ猫が多いです。他にも猫によって撫でると喜ぶ場所があるので、様子を見ながら探してみましょう。
また、撫でるタイミングも重要です。食事やセルフグルーミングをしている時は、自分の行動に集中しているため、撫でられるのを嫌がります。猫がリラックスしているタイミングで撫でてあげるとよいでしょう。ただ、近づくと逃げてしまう関係性の場合に、無理に撫でる行為はNGです。まずは、ご紹介したポイントを押さえ、飼い猫との距離感を近づけていくことから始めましょう。
猫が飼い主から逃げるのにはちゃんと理由がある
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猫が飼い主から逃げるのには相応の理由があります。あなたが普段何気なくしている行動が原因となり、愛猫が嫌な気持ちになっているかもしれません。
今回ご紹介した猫が飼い主から逃げる理由を参考にしていただき、これまで以上に愛猫との関係をより素敵なものにしてくださいね!
著者情報
U.SHOHEI
父親が犬のブリーダーをしていたこともあり子どもの頃から犬に囲まれた生活を送る。
現在は趣味の動物園・水族館めぐりから得た知識をもとに幅広く動物に関する記事の執筆をおこなっている。
得意な生物は、犬・猫・海洋生物・エキゾチックアニマル。