江戸の猫愛を描いた浮世絵師・歌川国芳の“猫づくし”作品特集

古くから人々に親しまれている動物である「猫」。その可愛らしさは多くの芸術家たちの心も動かすほどであり、なかでも特に猫好きの間で人気なのが、浮世絵師・歌川国芳の作品たちです。本記事では、浮世絵師の歌川国芳が描いた猫に関する作品について解説していきます。 2025年11月15日作成

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浮世絵師・歌川国芳とはどんな人物?

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歌川国芳とは、江戸時代末期を代表する浮世絵師で「奇想の絵師」として現代でも高く評価されている人物です。
江戸時代を代表する浮世絵界の派閥・歌川派の人気絵師で、19歳で錦絵(=多版多色刷りの浮世絵版画のこと)に着手し、多彩なジャンルの絵を生み出してきました。
特に戯画は歌川国芳の得意分野であり、現代でも多くの人から親しまれるユーモアに溢れた作品が数多く残っています。
また、江戸っ子気質の人柄も影響しているのか、数多くの弟子を抱えた巨匠でもあり、月岡芳年や落合芳幾などを輩出しています。

歌川国芳の作品に猫が多い理由とは?

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現代でも高い人気を誇る人気浮世絵師の歌川国芳ですが、猫をモチーフとした作品が多いことでも知られています。
植物や人物など、浮世絵といってもさまざまなモチーフがあるなか、歌川国芳はどうして「猫」を多く取り入れているのでしょうか?
ここからは、歌川国芳の作品に猫が多い理由について考えていきましょう。

江戸の街きっての愛猫家だったから

歌川国芳が江戸後期を代表する「猫好き」であるという説も、猫が登場する作品が多い理由の一つといえるでしょう。
歌川国芳の画塾に通っていた浮世絵師・河鍋暁斎が描いた「暁斎幼時周三郎国芳へ入塾ノ図」には、国芳は懐に飼い猫を入れながら、幼かった暁斎に絵を教えていた様子が表現されています。
画塾の至る所にたくさんの猫がくつろいでおり、その全てが国芳の飼い猫。
多いときには十数匹もの飼い猫と一緒に暮らしていたとされています。

また、愛猫が脱走した際には画塾の弟子総出で捜索し、猫が亡くなった際には飼い猫専用の仏壇と位牌を用意して弔っていたようです。
猫一匹一匹に対する国芳の愛情が、作品作りにも大きく影響を及ぼしていたといえるでしょう。

江戸時代の人々にとって猫が親しみやすい存在だから

歌川国芳の作品に猫が多いもう一つの理由として、当時の人々にとって猫が親しみやすい存在であったからという説があります。
江戸時代はネズミによって穀物などが食い荒らされる被害が多く、ネズミによる被害を減らす役目を猫が担っていました。
ちなみに江戸時代初期はまだ猫の数が少なかったことから、ネズミ避けの力があるとして猫の絵を飾る人も多かったのだとか。
その後、ネズミ取り用として庶民の間でも猫が飼われるようになったこともあって、江戸時代は熱い「猫ブーム」が到来した時期とされています。
このような歴史から、人々に愛される絵のモチーフの一つとして猫が選ばれたともいえるでしょう。

歌川国芳が描く「猫」が登場するユニークな作品を紹介!

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歌川国芳が表現する「猫」は、どの作品においても本物のように生き生きとした姿が表現されています。
作品のなかには、歌川国芳の猫への愛が細部にまで表現されているものもあるため、猫好きであれば思わず笑みがこぼれてしまうかも?
ここからは、歌川国芳が描く「猫」が登場するユニークな作品を紹介します。

鼠よけの猫

「鼠よけの猫」は、19世紀に歌川国芳が描いた大判の錦絵です。
小さな鈴が付いた可愛い赤の首輪を身に着けた猫は、ネズミ取りという重要な任務を任されています。
じっと上を見ている猫の姿はネズミを捕まえるために、飛び掛かる瞬間を今か今かと見計らっているように見えますね。
力が入った脚や丸まった背中、ピンッと張ったヒゲなどといった絵の細部から、猫が獲物を狩る際の緊張感が伝わってきます。
猫ならではのしぐさとしなやかな体躯は、猫好きの歌川国芳だからこそ描ける表現といえるでしょう。

なお、絵の上部には文章が記載されており、要約すると「これを家内に貼っておけば、鼠が絵を見て驚くので、次第に家の中に出ることが無くなる。出てきてもイタズラをしなくなる。」という内容です。
江戸の人々を困らせる鼠すらも恐れおののいて逃げ出してしまうほど、この作品の猫が写実的であることが分かりますね。

猫のすゞみ

「猫のすゞみ(すずみ)」とは、19世紀に歌川国芳が描いた錦絵の一つです。
両国橋を舞台に、夕涼みに訪れる客や芸者と船頭のやり取りを擬人化した猫で表現しています。
船に乗る船頭の浴衣にはタコの柄、芸者猫の着物の柄にはうなぎ・あわびなどの海鮮をあしらっているなど、細かいところに猫の好物に関連するモチーフが隠されているのがポイント。
作品タイトルである「猫のすゞみ」の文字は鰹節で囲われており、歌川国芳の猫愛が随所に詰まっていますよ!

向かい合う船頭猫と芸者猫、一体どんな会話をしているのでしょう?
優しい表情と上品で生き生きとした所作は、眺めているだけで会話の内容が聞こえてきそうですね。
着物の柄や立ち振る舞いによって、登場人物であるそれぞれの猫のキャラクター性の違いが伺えるのも可愛いですね。
ちなみにこちらの浮世絵は当時団扇のデザインとして採用されていたとのこと。
可愛い猫と涼し気な風景をあしらった団扇は、夕涼みの季節にぴったりですね。

金魚づくし・百ものがたり

「金魚づくし・百ものがたり」とは、19世紀に描かれた中判の錦絵です。
江戸で流行し人々の間で親しまれてきた怪談会である「百物語」をテーマとしています。
この錦絵は、様々な生物や金魚を擬人化し、愛しい姿を生き生きと描写している「金魚づくし」シリーズの一つ、「百ものがたり」です。
江戸で流行った怪談会、「百ものがたり」をやっている様子が描かれています。「百ものがたり」では百本の蝋燭を灯し、怪談が一つおわる度に蝋燭を一本ずつ消し、最後の蝋燭が消えると化け物が現れると言われていました。
この絵では最後のお話が終わり、化け猫が現れた様子が描かれています。
こちらの絵は、他の作品に比較し、猫が少し恐ろしい表情をしているのもポイント。
自分たちを狙って手と舌を伸ばす大きな猫の姿は、魚たちにとってはとても恐ろしく見えるでしょうね。

其のまま地口 猫飼好五十三疋

「其のまま地口 猫飼好五十三疋(みゃうかいこう ごじゅうさんびき)」は、1848年頃に描かれたとされる浮世絵です。
「どこかで聞いたことがある名前だな…」と感じた人もいるのではないでしょうか?
実はこの作品、有名な浮世絵師である歌川広重の代表作「東海道五十三次」のオマージュなんです。

「東海道五十三次」は東海道沿いの53カ所の宿場を中心に、さまざまな景色や人物の暮らしの様子を描いていますが、この作品は55匹の猫たちのしぐさ・習性が表現されています。
籠の中でご満悦の猫、名前を呼ばれて誇らしげな猫、袋の中に頭を突っ込む猫など…猫と一緒に暮らしたことがある人であればつい「あるある!」と声に出してしまうような可愛いしぐさが満載です!
一匹一匹違った表情や模様をしているので、あなたの「推し猫」が見つかるかも?

歌川国芳が描く猫を取り入れたおすすめアイテムを紹介!

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歌川国芳の作品は現代でも多くの猫好きの心を掴んでおり、国芳の猫をモチーフとした作品をデザインした可愛いグッズも数多く販売されていますよ!
ここからは、歌川国芳の作品を取り入れたおすすめのアイテムを紹介します。

歌川国芳の猫作品をモチーフとしたおすすめアイテム(1)小さいふ。コンチャ

歌川国芳の猫愛が詰まった作品「其のまま地口 猫飼好五十三疋」をモチーフとした、可愛いミニ財布です。
財布の表面には歌川国芳が描いた、さまざまなしぐさをする猫たちが隅々までプリントされています。
どこを見ても猫だらけなので、猫好きにはたまらないアイテムといえるでしょう。

可愛らしさだけでなく、実用性もバツグン!
コンチャ(=貝殻)を模した小さなボディでありながら、3つのカードポケットにお札入れ、小銭入れがそれぞれ独立しているので、支払いの際にもお金やカードの出し入れがスムーズですよ。


小さいふ。コンチャ

歌川国芳の猫作品をモチーフとしたおすすめアイテム(2)石塚硝子 江戸猫ぐらす

「其のまま地口 猫飼好五十三疋」に登場する猫をあしらった、可愛さ満点のグラスセットです。
盃と豆皿がセットになっており、歌川国芳が描く猫と和柄をそれぞれデザインしているため、一緒に使いたくなりますよ。
縁部分には金で縁取られていて、高級感もあります。
食器が入っている木箱にも歌川国芳の猫の絵がデザインされているので、自分用にはもちろん、猫好きな人へのプレゼントにもおすすめですよ!


石塚硝子 江戸猫ぐらす

歌川国芳の猫作品をモチーフとしたおすすめアイテム(3)東京国立博物館 歌川国芳 戯画撰

歌川国芳が描く、代表的な戯画たちをデザインした絵ハガキです。
本記事でも紹介した「金魚づくし・百ものがたり」をはじめ、猫や金魚などの動物がユーモアたっぷりに描かれた8種類の作品のポストカードがセットになっています。
可愛らしくて温かみのある作品の数々は、猫好きにはもちろん動物好きにもぴったりなアイテムですよ。


東京国立博物館 歌川国芳 戯画撰

歌川国芳が描くユーモアあふれる猫の世界を楽しもう!

出典:https://www.shutterstock.com

江戸末期を代表する浮世絵師・歌川国芳。
彼の作品はモチーフに対する鋭い観察眼だけでなく、猫に対する深い愛情も伺えることから、現代でも多くの猫好きから高く評価されています。
猫の可愛らしさと、ほんの少しのユーモアが調和した、歌川国芳の作品が生み出す世界観をぜひチェックしてみてくださいね!

参考サイト

・小さいふ。クアトロガッツ 楽天市場(参照日:2025/9/19)
https://item.rakuten.co.jp/quatrogats/10000100cat/

・WADA TOKI 楽天市場(参照日:2025/9/19)
https://item.rakuten.co.jp/wadatoki/s6289/

・京都便利堂 楽天市場店(参照日:2025/9/19)
https://item.rakuten.co.jp/kyotobenrido/2400900011287/

著者情報

西野由樹

生粋の犬好きなフリーランスWebライター。執筆のお供はコーヒーと愛犬のマルチーズ「こたろう」。
やんちゃな愛犬にちょっかいを出されつつ、今日も実体験・調査に基づいた執筆で、読んで楽しい記事づくりに勤しむ。

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