猫同士の舐め合いは愛情表現の一種
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多頭飼いをしている家庭では、猫同士の舐め合いも見られることがあるでしょう。お互いに舐め合う姿を見ると、とても穏やかな気持ちになりますよね。
しかし時には、気持ち良さそうに舐められていた猫が突然怒って、喧嘩になることも。飼い主としては、どうしてそのようなことが起こるのか分からず、怒られてしまった猫が可哀想に見えてしまうことも。
猫には、猫にしか分からないルールもあるのは十分に理解しているつもりでも、この謎の行動の意味は気になりますよね。
まずは、猫同士が舐め合う意味や理由を見てみましょう。
アログルーミングとは
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猫同士がお互いに舐め合うことを、アログルーミング(allogroomingまたはsocial grooming)と呼びます。「アロ」とは英語で「他の」という意味で、自分ではない他の猫を舐めてあげることを意味します。このアログルーミングは、猫同士の信頼関係の証しでもあります。
他の猫がいたら必ず見られる行動、というわけではありません。お互いに信頼している間柄でなければ、このような行動は見られないようです。
信頼関係の証し
猫は、相手を舐めてあげることで、「大好きだよ」「あなたに敵意はないよ」と伝えていると言います。お互いに、相手に自分をニオイをつけて信頼関係を築いているのです。こうして、その猫同士の仲の良いことをアピールしているとも考えられています。
縄張りを大事にする猫だからこそ、アログルーミングはオス猫同士ではあまり見られないようです。どちらかと言えば、メスとオス、あるいはメス同士の組み合わせが一般的。オス同士は縄張りを争う相手となるため、アログルーミングできる関係性になりにくいのですね。
しかし、ずっと同じ場所で生きてきた兄弟猫の場合などは、オス同士のアログルーミングも見られます。
自分が舐められない場所を補う
猫が多くの時間を毛繕いに費やすことはよく知られていますが、自分ではどうしても舐められない場所もあります。アログルーミングでは、自分では舐められない場所を舐め合う姿をよく見ますね。例えば、顔や頭、首、耳、背中などでしょうか。
相手に身を委ねて気持ち良さそうに舐められている猫をよく見ると、たまに自分で舐めて欲しい場所を差し出すようにして調整していることがあります。こうして、猫は信頼した相手に自分ではできない部分の毛繕いを任せているのですね。
多頭飼いしていない家庭の場合、一匹しかいない猫はアログルーミングできませんが、飼い主さんに顔や首、頭を撫でてもらうと気持ち良さそうな様子を見せます。飼い主さんの手がアログルーミングの代わりになっているのでしょう。
飼い主さんを舐めるのはアログルーミングのつもり?
猫が飼い主さんを舐める時に考えられる理由は、何かを要求するときや自分のニオイをつけて安心したいとき、親愛の気持ちを示すなどと言われます。
何かを要求する時…はさておき、他の理由からはアログルーミングと同じように好意的な気持ちを示す行動であることから、アログルーミングの1つなのかもしれませんね。
そもそも猫はなぜグルーミングをするのか
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猫は、起きている時間の半分ほどをグルーミングに使うと言われるほど、あちこちを舐めて毛繕いしています。これは、さまざまな理由があるようで、単なるキレイ好きというだけではありません。
猫のグルーミングは、皮膚の病気を防ぎ、健康を維持するためのものでもあります。ザラザラとした舌で舐めることで、適度な刺激を与えることが、猫の健康を保つ上で重要なのです。
毛並みを整えキレイにする
毛繕いをして抜けそうな毛やホコリ、フケを取り除くと、皮膚トラブルを防ぐことができます。冬場の静電気も、毛繕いによって防ぎやすくなるのだそう。
ニオイを消す
もともと、猫は狩りをして生きる動物です。人間に飼われると狩りをする必要はなくなるものの、狩猟本能は備わっているといわれています。食べたものや体臭、飼い主さんのニオイはグルーミングで消して狩りに備えるのが、野生の本能です。
気持ちを落ち着かせるため
驚いた時や興奮した時、ストレスを感じた時などは、自分の気持ちを落ち着かせるためにグルーミングをすることがあります。飼い主さんに叱られた時にペロペロしていると、まるで反省の気持ちが見えない!と思うかもしれませんが、猫は必死で自分の気持ちを落ち着かせようとしているだけ。叱らなくても良い方法を見つけてあげましょう。
体温を調節する
猫は、肉球や鼻でしか汗をかけません。そのため、暑い時期は唾液を毛に含ませて気化熱を出し涼しくしようとします。寒い時期は、暖かい空気を毛の間から取り込めるように、メンテナンスをしているのです。
舐めすぎはストレスが関係しているかも
このように、グルーミングは猫の健康を保つ上でとても大切な行動です。しかし、度が過ぎれば抜け毛にもつながり、注意が必要かもしれません。猫は自分の気持ちを落ち着かせるためにグルーミングをすることがありますが、この時はやや強めに舐めることが多いようです。ストレスを感じる場面が多ければ、グルーミングの頻度も増えるでしょう。
猫の平均グルーミング時間
猫種ごとの平均のグルーミング時間は、短毛種で1日あたり15分程度、長毛種では20分以上といわれているようです。ずっと猫の側で過ごすことは難しいですが、目に見える距離にいる時には、どのくらいグルーミングしているかチェックしてみるのもよいでしょう。
ストレスの原因を取り除いてあげよう
もし、あまりにも頻繁にグルーミングをしているようなら、ストレスの原因を取り除いてあげることが肝心です。引っ越しなど、どうしてもやむを得ない環境の変化などがストレスになることもあるため、ストレスをすべて今すぐに取り除くのは困難かもしれませんが、猫が落ち着ける場所をひとつ作ってあげるだけでも、効果は見込めます。静かで少し暗く、まわりが囲んであるような場所を作ってあげましょう。グルーミングのし過ぎで、身体の一部が脱毛してしまう、心因性脱毛症、心因性皮膚疾患になることもあります。
また、すでに皮膚にトラブルが起きていて、その箇所が気になって過剰にグルーミングをしている可能性もあります。皮膚トラブルが起こっていないか確認し、必要があれば受診もおすすめします。
毛球症にも注意!
猫が毛を飲み込むことが原因で起こる消化器の病気、毛球症にも注意しましょう。グルーミングによって毛が体内に入り、胃や腸などで絡み合って毛球になります。ほとんどは、うんちと一緒に排泄されるものの、胃の中で大きくなりすぎて、胃や腸を刺激して毛球を吐き出すこともあります。
猫の毛球症:綾部動物病院
http://www.ayabe-ah.com/info/animalhospital/kiji001010.php
ブラッシングで愛情表現を
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猫は自分で一生懸命グルーミングをしますが、飼い主さんがブラッシングをしてあげることも大事です。必要以上に抜け毛を飲み込まないようにすることや、体の異常がないかチェックすることにつながります。猫にとっては、アログルーミングされている気分にもなり、きっと慣れれば喜んで応じてくれるでしょう。
著者情報
こば
小さな頃から保護された犬や猫を迎えて生活。現在は黒猫の「ジジ」に翻弄されながら、発見と感動の毎日を送っています。
実体験を振り返りつつ、飼い主さんの役に立つような情報を分かりやすく記事にすることを目標にしています。