犬の椎間板ヘルニアは人間と同様に痛みを伴います。ヘルニアが起こる部位にもよりますが、重症例では後肢を動かせなくなります。また、最悪なケースでは脊髄軟化症と言う致死的な病気になることもあります。
椎間板ヘルニアは重症度によって、適切な治療法、予後が異なります。早期発見、早期治療が大切ですが、治療の甲斐なく亡くなってしまう場合もあります。椎間板ヘルニアはどういう病気なのか、どういった症状がでるのか、治療法があるのかなど、ご紹介していきます!
椎間板ヘルニアってどういう病気?
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椎間板とは…?
犬の背骨には人間と同様に椎骨と椎骨の間にクッションの様な役割をしているものがあります。それが「椎間板」です。この椎間板が何らかの原因で本来あるべき場所からずれてしまった病気を「椎間板ヘルニア」といい、脊髄や神経根が圧迫されることで症状が現れます。
椎間板ヘルニアの危険因子
椎間板ヘルニアになる危険因子を挙げます。
Ⅰ.遺伝的背景
軟骨異栄養犬種に含まれる品種は椎間板ヘルニアになりやすいことで知られています。ダックスフンドが代表的で、コーギー、チン、バセットハウンド、シーズー、ペキニーズなどが好発犬種です。もちろんこれら以外の犬種でも起こることはあります。
Ⅱ.過度な運動(高い場所から飛び降りる、など)
運動のし過ぎ、高い場所からの落下、事故などの瞬間的な衝撃が加わると、それがきっかけで椎間板ヘルニアになることが多くみられます。
Ⅲ.肥満
肥満になると椎間板ヘルニアのリスクが上がると考えられます。
体重の増加が椎間板への負担になるためです。
椎間板ヘルニアの症状(今回は胸腰部椎間板ヘルニアの場合をご紹介します)
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椎間板ヘルニアは重症度によってグレード分類されています(グレード分類は複数あり、今回は胸腰部の椎間板ヘルニアにおける一般的なグレード分類をご紹介します)。
・グレード1
背部痛のみ。歩くことができ、ふらつきもみられない。
抱っこや触られるのを嫌がる、歩きたがらない、寒くないのに震えている、などの症状がみられます。痛みを感じると犬が「キャン」と大きな声で鳴きます。
・グレード2
歩くことはできるが、ふらついている。
・グレード3
後肢が思うようにが動かせず(歩くことができない)、前肢のみで歩く。
・グレード4
後肢が全く動かせず、前肢のみで歩く。後肢や尾に痛みの感覚は残っている。
・グレード5
後肢が全く動かせず、前肢のみで歩く。後肢や尾の痛みの感覚はなくなっている。
椎間板ヘルニアの治療法
椎間板ヘルニアの治療方法には内科的治療と外科的治療があります。
症状が軽度の場合(グレード1など)、内科での治療を選択する場合もあります。ステロイドなどの痛みを緩和できる薬が処方され、家では安静が必要です。ヘルニアによる物理的な圧迫は薬では治すことはできませんので、再発や病態が進行する可能性もあります。
外科的治療法では逸脱した椎間板を取り除くという手術をします。専門医による適切な手術が施されれば、グレード4の歩けない症例でも歩けるようになる確率は9割以上です。しかし、グレード5の症例ではそれが5割以下になります。
また、椎間板ヘルニアによって脊髄軟化症になってしまった場合、手術を行ったとしてもほとんどが亡くなってしまいます。
ヘルニアを予防する方法
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椎間板ヘルニアは、完全予防ができない病気です。しかし、飼い主さんの日頃の気配りでリスクを減らすことができます。特に椎間板ヘルニアになりやすいとされている犬種を飼っている方は肥満や段差などには注意をしましょう。散歩は首輪よりハーネスを使用する方が負担がかかりにくいです。
また、フローリングのご家庭では、犬が滑って腰や首に負担がかかりやすいため、絨毯やカーペットなどをひいてあげると良いでしょう。
この記事は獣医師が監修しています
本間 克巳
・本間獣医科医院長
・北里大学 獣医畜産学部 獣医学科卒業
・小動物臨床専門
・その他、海外協力事業とNPO法人の活動、アジア諸国への病院設立、人医師との腎臓移植・腹膜透析・細胞再生医療などの共同開発事業など幅広く活動中
著者情報
UCHINOCO編集部
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