短足犬種が誕生した裏側にはどういった経緯があるのでしょうか。人気の短足犬種の特徴や短足だからこそ気をつけたい病気についてみていきましょう。
足の短い犬が誕生した理由
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短足犬種はどのような経緯で誕生したのか知っていますか?
今回は3つの説をご紹介します。
獲物を捕獲しやすくするため
短足犬の代表的な犬種であるダックスフンドは、アナグマを穴に追いつめ捕獲する役割を果たしていました。
そのなかで、狭い巣穴に逃げ込む獲物をスムーズに捕獲する方法として検討されたのが、品種改良によって適した体型の個体を作ることです。その後、長い時間を経て現在の姿として固定されました。
日本ではお目にかかれませんが、ダックスフンドは現在でも原産国のドイツで猟犬として活躍しています。
牛に反撃されないようにするため
かわいらしい姿が大人気の犬種であるコーギーは、かつて牧畜犬として牛を管理する仕事をしていました。
そのため、牛のあいだを素早く駆け抜けながら誘導しなければなりません。しかし、ときには牛の蹴りを受けケガを負ってしまうこともありました。
そのことから、牛のまわりを縦横無尽に走り回れる俊敏性と、牛に蹴られにくい小さな体型が求められるようになり、現在のコーギーが誕生したといわれています。
遺伝子による影響
「短足犬は遺伝子配列がほかの犬種とわずかに異なっている」という研究結果が、アメリカの科学誌に掲載されました。
そのなかでは、短足犬種にはFGF4というたんぱく質の重複がみられ、これにより足が伸びきる前に発達が完了するとの報告がなされています。
ですがまだまだ不明な点も多いことから、遺伝子による短足犬種の誕生については、現在も引き続き研究がおこなわれています。
足の短い人気犬種4選!
短足犬種にもさまざまな種類があります。
今回はそのなかから人気の高い4種類をご紹介します。
ダックスフンド
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【基本データ】
原産国:ドイツ
体重:雄、雌ともに9~12kgが理想(スタンダード)
毛色:黒、タン、レッド、クリーム、チョコタン、シルバー、ゴールド など
ダックスフンドはドイツ原産の犬種であり、12~13世紀にかけて、アナグマ猟に用いる目的で胴長短足のスタンダードサイズが誕生しました。
日本でも人気のあるミニチュアサイズのダックスフンドは、20世紀初頭に作出されたものであり、その歴史はまだ浅いものです。
その姿からは想像できないほどの俊敏性とスタミナを兼ね備えており、飼い主の気持ちを理解するのに長けていると犬種だといわれています。
コーギー
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【基本データ】
原産国:イギリス
体重:雄10~12kg、雌10~11kg
毛色:レッド、セーブル、フォーン、ブラックタン など
コーギーはイギリスを原産国とする犬種です。
昼は牧羊犬、夜は番犬としての役割を果たしていました。
全体的にずんぐりとした体型をしていますが、俊敏な動きと強靱な足腰を持っています。
ヘンリー2世に愛されるなど、イギリス王室との関係が強い犬種でもあります。
ペキニーズ
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【基本データ】
原産国:中国
体重:雄5kg以下、雌5.5kg以下
毛色:ブラック、ホワイト、レッド、シルバー など
ペキニーズは原産国を中国とする愛玩犬であり、かつては宮廷で飼育されていました。
アヘン戦争の際、宮廷に残されていた数頭をイギリス人兵士が持ち帰ったことで、ヨーロッパでもペキニーズが広く知られるようになりました。
頑固な性格をしており、抱っこや膝の上に乗せられるのを嫌う個体が多いことから、「猫のような犬」といわれることもあります。
バセット・ハウンド
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【基本データ】
原産国:フランス
体重:雄23~29kg、雌20~27kg
毛色:トライカラー(ブラック、ホワイト、タンの混合) など
バセット・ハウンドはフランスを原産国とする犬種です。
フランスの修道院に勤める僧が狩猟のお供として、人間の横をゆっくり歩く犬を作り出そうとしたことがはじまりだといわれています。
マイペースでおだやかな性格をしており、飼い主への忠誠心も高いです。
足の短い犬に多い病気
短足犬種に多い病気として、股間節形成不全症・椎間板ヘルニアがあげられます。
それぞれどのような病気なのかみていきましょう。
股関節形成不全
股関節形成不全症とは、股関節の発達がうまくいかずに成長の段階で変形や炎症が起き、股関節の緩みが発生する病気です。
腰を振るように歩く(モンローウォーク)、運動したがらない、後脚に痛みを感じる、などの症状があらわれます。
股関節形成不全症の発症リスクは遺伝によるところが大きく、完全に予防するのは難しい病気です。
治療法としては、運動制限や鎮痛剤によって痛みの軽減を図る内科治療、もしくは人工関節へ置換するなどの外科治療をおこなうのが一般的です。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは、背骨をつないでいる椎間板が変性し突出することで、脊椎の神経を圧迫する病気です。
動きたがらない、後脚がふらついている、後脚のマヒなどの症状があらわれます。
発症の原因は、過度な運動や老化、外部からの強い力によるものとされています。とくに短足犬種は椎間板の変性を起こしやすく、外力に対してもろいという特徴を持っているため、椎間板ヘルニアの発症率が高くなるようです。
投薬などのほかに、突出した椎間板部を取り除く外科手術などが治療としておこなわれます。
病気を予防するためには
股間節形成不全症や椎間板ヘルニアを予防する方法として有効とされるものは以下の通りです。
・体重コントロールによる肥満予防
・階段などの高所移動を少なくする
・滑らないよう床にカーペットなどを敷く
遺伝的に発生する病気を予防するのは難しいですが、愛犬の体に負担がかからないよう、普段からできる取り組みをおこないましょう。
短足犬種ならではの特徴を楽しみましょう!
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短足犬種はそのかわいらしい姿からとても人気があります。
ですがそれと同時に、短足犬種ならではの発症しやすい病気なども存在しています。
愛犬の健康を守りつつ、短い足でちょこちょこと近づいてくる姿をこれからも楽しみましょう!
著者情報
U.SHOHEI
父親が犬のブリーダーをしていたこともあり子どもの頃から犬に囲まれた生活を送る。
現在は趣味の動物園・水族館めぐりから得た知識をもとに幅広く動物に関する記事の執筆をおこなっている。
得意な生物は、犬・猫・海洋生物・エキゾチックアニマル。