猫の記憶力は低い?高い?猫の持つ記憶力の特徴を解説します

動物には学習したことを脳に蓄積する「記憶力」という能力が備わっています。ものごとを記憶する力は人間以外の動物たちも有しており、もちろん猫も持ち合わせている能力です。そこで今回は、「猫の記憶力」について解説します。 2021年06月15日作成

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猫はどれくらい前のことを覚えていられるのでしょうか?私たち人間とどのような違いがあるのでしょうか?猫の記憶力についてみていきましょう!

動物の持つ「記憶」のメカニズム

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記憶とはどのような能力なのでしょうか?記憶のメカニズムと種別について解説します。

記憶のメカニズム

記憶とは「情報の受信」「情報の保持」「情報の連想」の3ステップから構成されています。

例をあげると以下のようなものです。
1. SNSで自宅の近所においしいスイーツのお店があることを知った(情報の受信)
2.「今度買いに行こう」とお店の名前をしっかり確認した(情報の保持)
3. お店の近くを通った際にふと思い出し、食べたかったスイーツを購入した(情報の連想)

これら3ステップを、脳内の「海馬」と「大脳皮質」とよばれる器官で処理し、いつでも情報を引き出せるようストックしているのです。

記憶には大きく分けて2種類のものがある

① 短期記憶

短期記憶とは、「短い時間しか覚えていられない記憶」のことです。
例をあげると、英単語を学習する際や電話番号などの数字を一時的に覚える場合が考えられます。

短期記憶はその言葉の通り、短い時間しか覚えていられないのが特徴です。

普段の生活にあまり関係のない事柄や重要度が低い内容について忘れてしまうのは、この短期記憶として覚えているからだと考えられます。


② 長期記憶

長期記憶とは、「長期間にわたって覚えていられる記憶」のことです。

長期記憶は短期記憶をなんども繰り返すことで定着し、いつでも引き出すことができるようになります。

さきほど短期記憶の例としてあげた英単語の学習で考えると、なんども反復して短期記憶として蓄積することで、いつでも出し入れ可能な長期記憶へ変化するというイメージです。

猫はすぐに物事を忘れる?猫の記憶力は低いのか

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猫の記憶力が極端に低いわけではありませんが、覚えられる内容に得意・不得意があるという解釈が正しいです。

エサが入った箱を事前に覚えさせ、どの程度覚えていられるのかを計測した実験があります。
その結果、猫は16時間経過したあとでもエサの入った箱を覚えていたといいます。

ただし、猫は自分の興味がないものに関しては10秒程度しか覚えていられないとする研究もあることから、自分にメリットのある事柄については長く覚えていられるようです。


また、動物の本能によるものですが、猫は恐怖や不安に感じた出来事を長期間にわたって覚えているとされます。

猫が恐怖や不安を感じる出来事はさまざまですが、例えば、お風呂に無理やり入れられた、自分より体の大きな個体に攻撃された、動物病院で注射された、などがあげられるでしょうか。

子猫の時期、おおよそ生後7週までの記憶を猫は持ち合わせているとする説もありますが、詳しいことはわかっていません。

これらのことから、猫は自身にメリットのある事柄や身の危険を感じる出来事については鮮明に覚えているが、興味のないことについてはあまり覚えていないと考えられます。

猫はなぜ犬のように芸をしないのか

個体による違いはあるものの、猫は犬に比べて芸をするような動物ではありません。

脳化指数とよばれる、脳の重さと体重とを比較した割合では、知能面において猫と犬に大きな差がないことがわかっています。

【脳化指数】
人間:7.4~7.8
バンドウイルカ:5.3
チンパンジー:2.2~2.5
ゴリラ:1.5〜1.8
カラス:1.25
犬:1.2
猫:1.0

そのため、猫が犬のように芸をしないのは、知能が犬に劣っているからではなく、芸に対する関心が薄いことが理由のようです。

また、これは筆者の考えですが、猫と犬とではこれまでの歴史において、人間とのかかわり方に違いがあることもひとつの理由でないかと考えています。

犬は元来、牧羊犬や軍用犬など、人間の仕事をサポートする使役目的で飼育・改良されてきました。

そのことから、犬は猫と比較すると人間の望みを察知する力に長けているといえます。

犬が芸を覚えようと頑張るのも、人間の望んでいることを察知して行動に移そうとする、犬の持つ本能的なものなのではないでしょうか。

猫の記憶力が低下する要因

猫の記憶力が低下する要因と考えられるものを2つご紹介します。

① 老化

人間と同様に、猫も老化によって記憶力が低下する傾向にあります。人間の言葉でいうと、俗にいう「物忘れ」という現象です。

加齢による脳の血流低下、神経細胞の機能低下などが原因となって記憶力がさがるとされています。

【猫の老化を知る目安】
・短気になる
・水を多く飲む
・寝ている時間が増える
・全体的に瘦せる
・毛にツヤがなくなりボソボソになる
・動作がゆっくりになる など

人間と猫の脳は構造が似ているといわれているため、老化による記憶力の低下につながるメカニズムが類似するところもあるようです。

② 認知症などの病気

認知症などの病気が原因となり記憶力が低下する猫もいます。

猫の認知症は早いと8歳ぐらいから発症するといわれており、以下のような行動が症状としてあげられます。

・名前を呼んでも反応しない
・怒りっぽくなる
・フードの好みが変わる
・トイレ以外での粗相
・夜泣き
・同じところグルグルと徘徊する
・自傷行為 など

猫の認知症を画一的に診断するのは難しいとされています。
そのため、ほかに考えうる病気を除外していった結果、最終的な結論として認知症と診断されるケースが多いようです。

あなたの愛猫に認知症の症状と似たものがあらわれたときは、「歳のせいかな?」と思うのではなく、病気の可能性も考慮するようにしましょう。

猫の記憶力は決して侮れません!

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猫の記憶力は私たち人間が思っている以上に高いことがわかります。

猫は「3年の恩を3日で忘れる」といわれていますが、必ずしもそうとはいえないでしょう。
大好きな飼い主さんのことは、すこし時間が経ったとしても覚えているものです。

楽しい、嬉しいなどの思い出も、猫はしっかり覚えているといわれていますから、愛猫が喜んでくれるような時間をともに過ごしてあげてくださいね!

参考サイト

公益社団法人日本獣医学会(参照日:2021/5/19)
https://www.jsvetsci.jp/10_Q&A/v20140205.html

著者情報

U.SHOHEI

父親が犬のブリーダーをしていたこともあり子どもの頃から犬に囲まれた生活を送る。

現在は趣味の動物園・水族館めぐりから得た知識をもとに幅広く動物に関する記事の執筆をおこなっている。

得意な生物は、犬・猫・海洋生物・エキゾチックアニマル。

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