獣医師に聞く! 気づいてあげたい関節トラブル《パート2》

パート1では、犬や猫の「関節炎」について、炎症が起きやすい関節の部位や、関節を患いやすい犬や猫の種類を教えていただきました。パート2では、「関節炎」の具体的な症状や原因、また対処法について、引き続き、獣医師の堀木研子先生にお話をお伺いします。 2018年10月31日作成

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TOPIC 05

関節炎が悪化すると?

痛みが続く関節炎は、犬猫にもツライ病気です。しかし、万が一、飼い主が関節炎に気づかず、そのまま放っておくと、どうなるのでしょうか?

堀木先生:
「関節炎のなかでも代表的な変形性関節症という病気は、進行性の病気です。関節の軟骨がすり減ってしまうと、元には戻りません。気付くのが遅くなればなるほど、病気はどんどんと進行していきます。

軟骨がすり減ると、次第に骨と骨が直接ぶつかり合うようになり、それが続くと骨が変形してしまいます。痛みも悪化し、動作にも支障が出てきます。

変形性関節症は完治させることはできませんが、早期に発見して治療に取り組むことで、進行速度を遅くすることはできます。また、炎症を抑えることで、生活していく上での痛みがなくなり、楽にしてあげられます。早い段階で治療を開始すれば、そういった治療を行いながら、適度な運動や食事管理をし、病状が悪化しないように気をつけていくことができます。悪化の速度をなるべく遅くし、長い時間元気でいられるのです。

炎症や痛みはお薬で改善できますが、変形してしまった骨はお薬で治すことはできません。お散歩を楽しみにしている、外で遊ぶことを楽しみにしているワンちゃん、家の中を自由に遊びまわることが好きなネコちゃんが、動き回れなくなるのは、とてもツライことだと思います。痛みはもちろんですが、そういった生きる楽しみや生活の質という面でも、関節炎は早期に治療してあげましょう」

TOPIC 06

関節炎の原因

関節炎の原因にはさまざまなものが考えられます。

年齢もその一つです。一般的にシニア期と呼ばれる7歳以上の犬猫は、長年にわたって関節の軟骨に負荷がかかっているため、関節炎になりやすいと考えられています。ただし、若いからといって関節炎にならないわけではありません。一説には、1歳以上の犬猫は、その時点で関節の軟骨に多少なりともダメージを受けていると言われており、若くても関節炎になり得ます。

また、肥満は関節炎には大敵です。体重が増えれば、必然的に手足にかかる負担が大きくなります。日頃から体重管理をしっかりし、肥満にならないよう注意しましょう。

生活環境を整えることも大切です。例えば、フローリングは犬猫の足腰に負担がかかりやすいと言われています。また、犬の場合、激しい段差や高い場所への登り下りも手足や腰にダメージを与えます。フローリングにはカーペットを敷き、段差はなるべく作らないなど、住環境を整えることも関節炎を防ぐためには必要です。

このほかにも、股関節形成異常や膝蓋骨脱臼など先天的に異常がある場合や、骨折や靭帯断裂など何らかの怪我が原因となっている場合もあります。

いずれの場合も、関節炎の症状が見られたときに、すぐに治療をせず、放置してしまうと症状はどんどん悪化していってしまいます。関節炎の場合、適度な運動は筋力を保つためにも必要ですが、激しすぎる運動を続けていると炎症をさらに悪化させ、痛みも強くなってしまうので注意が必要です。関節炎の治療で大切なことは早期発見、早期治療です。飼い主は、普段の様子と違うところがないか、日頃から愛犬・愛猫の様子を観察しましょう。

TOPIC 07

関節炎の診断と治療

関節炎の治療では、早期発見が重要になってきます。そのため、飼い主が関節炎かもしれないと感じた場合、なるべく早く動物病院に相談に行くことをおすすめします。最近、動きたがらなくなった。散歩を嫌がるようになった。猫の場合、高いところへジャンプしなくなった。階段の登り下りに時間がかかるようになった。そういった何か普段と違う行動に気づいたら、関節炎かどうかの診断のためにも、躊躇せずに動物病院を受診しましょう。

堀木先生:
「動物病院では、飼い主さんから日常生活での様子の変化をお話しいただきます。その上で、歩き方や関節の動きをチェックし、必要であれば、レントゲンを撮って、骨や関節に異常所見がないかを確認します。

関節炎であると診断されれば、内服薬を使って痛みや炎症を取る治療を行います。痛みがあると、犬猫は動きたがらなくなり、そうすると足腰が弱くなって、病態が悪化してしまう恐れがあります。そのため、痛みを管理することは重要です。

骨の異常などが原因となっている場合には、外科手術を行うこともありますが、一般的な関節炎の治療では内服がメインとなるでしょう。

ただし、内服薬で痛みや炎症をとるだけでは、根本的な原因を改善することにはなりません。同じ生活を続けていては、いずれまた関節炎を起こしてしまうため、食生活の改善による体重管理や、リハビリ、適度な運動の継続など、お家でもケアを続けていく必要があります。

関節炎は一過性のものだけではなく、原因によっては再発したり、長く付き合っていかなくてはならない病気です。そのことを飼い主さんもしっかりと理解していただき、愛犬・愛猫たちが快適な暮らしが送れるよう、サポートしていただきたいと思います」

TOPIC 08

関節炎の予防法

関節炎を予防するためは、関節に負担がかからないように心掛けることが大切です。

堀木先生:
「まずは体重管理をしっかりと行いましょう。適正体重を維持し関節への負担を軽減することが、関節炎予防の一番の基本です。

さらに、フローリングにはカーペットを敷いて滑りにくくするなど、住環境を整えると良いでしょう。

運動量の多い子の場合には、関節の健康を維持するサプリメントを普段から使うというのも一つの選択肢です。サプリメントを日頃から飲んでいることで、飲んでいない場合と比較して、関節炎になった後の回復が早かったというデータもあります。予防的にサプリメントを飲んでおくことで、万が一、関節炎になってしまった場合に備えることができます。

サプリメントは、必ず動物用のものを使用しましょう。グルコサミンやコンドロイチンなどの、関節の軟骨を保護したり、軟骨の健康をサポートしてくれる成分が入っているものを選ぶと良いでしょう。動物病院で処方してもらえるサプリメントもありますので、獣医師に相談してみてください」

寒さが増してくると、関節炎の痛みも強く感じやすくなります。寒い季節、ツライ痛みを抱えるペットがいないよう、関節炎が気になる飼い主は、まずは動物病院を受診しましょう。

獣医師のご紹介

堀木 研子

バイエル薬品株式会社 動物用薬品事業部
CAビジネス統括部
学術 獣医師 堀木研子
・東京農工大学 農学部獣医学科卒業
・臨床獣医師として動物病院に勤務
・医療系広告代理店にて医療品コミュニケーションツールの企画制作に従事
・現在バイエル薬品株式会社 動物用薬品事業部 学術

著者情報

UCHINOCO編集部

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