犬・猫から人間に感染!? 予防することで防ぐ人畜共通伝染病

犬、猫から人間に感染する病気は意外に多くあります。今回は、人畜共通伝染病(人間にも移る伝染病)について、臨床歴30年以上の獣医師・Y先生にお話をお伺いしました。 2018年03月14日作成

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1. 犬猫から移る病気について考えよう

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動物と人間の両方がかかる病気を「人畜共通伝染病」「人畜共通感染症」と呼びます。日本では50年以上発生していない「狂犬病」も、世界中の人々があちこちに移動をしているということを考えると、いつどこで流行するかわかりません。「人畜共通伝染病」は、ペットの飼い主全員が考えなければならないことです。

2. 犬猫と接するときに気をつけたいこと

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ワクチン摂取や投薬することで防げる病気もありますが、まずは、そういった医学的な処置以前に、人間が犬猫と暮らすときに注意しなければならない点をご紹介します。

・ 濃厚な接触は避けよう
ペットが可愛いからといって、口移しで餌をあげたり、キスしたり、スプーンや食器を共用するのは、伝染病的観点からも、大変危険な行為です。また、一緒の布団で寝ることも避けるのがベストです。特に、乳幼児やお年寄り、免疫系の疾患を持つ人は注意が必要。獣医師の指導をあおぎましょう。

・ こまめに手を洗う
ペットと触れ合った後は、手洗いをしましょう。また、トイレ掃除やお手入れをした場合には、石鹸を使って十分に行ってください。

・ 環境・ペットを清潔に保とう
ブラッシングや定期的なシャンプーなど、ペットのお手入れを行い、清潔に保ちましょう。また、ケージ内やペットが使っている敷物類などもこまめに掃除して、細菌が繁殖しないよう心がけましょう。

3. 恐ろしい伝染病もある

ここでは、ペットから人間に移る病気の中で、特に恐ろしい病気をご紹介します。2006年に動物愛護法が改正され、人畜共通伝染病の予防のために必要な注意を払うことは飼い主の責任と義務づけられました。感染経路や症状を知り、飼い主は感染拡大を防ぐ努力をしましょう。

■ 狂犬病

感染経路…犬や猫、アライグマ、狐など多くの哺乳理に噛まれることによって感染する。

動物が感染した時の症状…犬は2週間の潜伏期を経て、興奮期から麻痺期と経過して、最後は全身麻痺となって昏睡する。致死率は100パーセント。

人間の症状・治療法…1カ月前後の潜伏期を経て、神経症状が出現。その数日後に、呼吸困難に陥り、死亡する。感染後、48時間以内に血清を打つと、致死率を下げることはできるものの、多くの場合、治すことは難しい。また、発症後は、治療法はない。

■重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

感染経路…マダニに噛まれることで感染する。

動物が感染した時の症状…まだ症例数が少なく、明確な基準はないが、発熱や白血球減少症、血小板減少症などが見られる。

人間の症状…発熱、全身倦怠感、消化器症状が現れる。乳幼児やお年寄りなど、体力が少ない人が感染した場合、重症化し、死亡することもある。致死率は現在、6.3〜30%とも報告されている。

■ Q熱

感染経路…犬猫などの糞尿から感染する。羊水にも病原体が含まれていることから、ペットの出産時に感染することもある。

動物が感染した時の症状…まれに流産などをおこすが、症状が出ない場合も多い。

人間の症状…人間が感染した場合の発症率は約50パーセント。発症すると、高熱や悪寒などインフルエンザに似た症状や、肝炎のような症状が現れる。まれに心内膜炎を伴う重症になることも。

「現在、日本ではSFTSの発症例が増加し、死亡例も見られるようになりました。この病気はマダニによって引き起こされる病気です。マダニは草むらや藪にも生息しているため、ペットの予防をすれば完全に防げるわけではありませんが、それでも自分のペットから感染するという悲劇は避けられます。ぜひとも、獣医師に相談し、予防を行ってください」(Y先生)

4. 予防接種をしよう

このページでも紹介した、狂犬病は、予防接種を行うことで防げる病気です。日本では、昭和29年から発生していない狂犬病ですが、これだけ人やものが世界中を行き来している現在、いつ、どこで流行するかわかりません。また、狂犬病の予防接種は、法律上も明記された、犬の飼い主の義務でもあります。年に1回、必ず接種しましょう。
また、重症熱性血小板減少症候群はマダニを介して感染する病気のため、ダニの予防薬を投与することで、ペットからの感染を防ぐことはできます。ダニの予防薬は内服タイプ、スポットオンタイプ、注射タイプがあります。獣医師に相談し、最適な方法で予防しましょう。

「ペットから飼い主に病気が移ったとしても、それは飼い主自身の責任です。問題なのは、大切なご家族や友人など、周囲に病気が広がってしまうことです。予防には、お金もかかります。しかし、自分が飼っている動物から、孫や子どもに病気が移るというのは、大変悲しいことではないですか? 動物と共存していくためにも、飼い主は、正しい知識を持って、予防に努めてもらいたいと思います」(Y先生)

著者情報

UCHINOCO編集部

UCHINOCO編集部では、ペットに関するお役立ち情報をお届けしています。

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