“猫”は“びょう”と読む?音読みから広がる四字熟語の世界

漢字の「猫」は「ねこ」と読むのが一般的ですが、音読みになると「びょう」と読みます。
日常生活ではあまり「猫」を音読みで使われないことから、なぜ・どんな表現で「びょう」と読むのか疑問に思う人も多いでしょう。
本記事では「猫」を「びょう」と読む理由とともに、表現・四字熟語などについて解説します。 2025年12月24日作成

  • 猫のカテゴリ - 猫の豆知識猫のカテゴリ - 猫の豆知識

漢字の「猫」を音読みで「びょう」と読むのはなぜ?

出典:https://www.shutterstock.com

「猫」という漢字は一般的に「ねこ」と読みますが、これはあくまで訓読みであり、音読みでは「びょう」または「みょう」と読みます。
丸くてふわふわで可愛いイメージがある「猫」に対して、音読みの「びょう」という音がしっくりこないという人も多いのではないでしょうか?
しかし「猫」という漢字や読み方の成り立ちを見てみると、さまざまな観点から「猫」という動物の魅力を表現していることが分かりますよ!
まずは「猫」の音読みが「びょう」と読む理由・由来について解説しましょう。

猫の鳴き声・特徴を表現しているから

漢字の「猫」の音読みが「みょう」と読む理由は「猫の鳴き声」を表現しているからとされています。
現代では「猫の鳴き声」と聞くと「にゃー」や「みゃー」といったイメージをする人は多いでしょう。
しかし、昔は猫の声を「びょうびょう」や「みょうみょう」と表現されていたことから「びょう・みょうと鳴く獣」という意味で、同じ「びょう」や「みょう」と読む漢字である「苗」を当てて「猫」という漢字にしたという説があります。

また「猫」の漢字の一部である「苗」は、種から芽生えたばかりの幼い植物を指します。
土に根を広げる前の幼い苗は、まだ柔らかくてしなやかな状態。
しなやかな身体と身のこなしで高い所や狭い場所でも軽やかに動き回れる猫の姿と似ていることから「苗」という漢字が当てられたという説もあります。

猫が持つ役割を表現しているから

「猫」という漢字や「びょう」という音読みには、人と猫の歴史において、猫が持っていた役割を表現しているからともいわれています。

漢字の発祥地である中国では、古くから収穫したアワなどがネズミによって食べられる被害があったとされています。
そんな人々の生活を脅かすネズミを退治し、収穫物を守る役割を猫が担っていました。
中国の陝西省にある泉護村で行われた発掘調査では、猫の2匹の骨が見つかっており、少なくとも約5300年前の中国では猫が人と共に暮らし、ネズミ退治で活躍していたとされています。

日本でも収穫した米をネズミから守るため、江戸時代初期に「猫放し飼い令」が発布されるほど、古くからネズミ捕りとして猫が重宝されていました。

粟も米も田んぼで育てる植物であることから、「田」に実る粟・米を荒らすネズミを狩る獣であることを表すために、「苗」にけものへんを足して「猫」という漢字にしたとされています。

「猫」の漢字が音読みで使われる身近な言葉

出典:https://www.shutterstock.com

日常生活では「猫」を「びょう」と読むことは少ないですが、意外に身近な言葉で音読みが使われていますよ。
ここからは「猫」の漢字が音読みで使われている身近な言葉を紹介します。

愛猫(愛猫家)

猫飼いであれば多くの人が自然に使っている「愛猫」や「愛猫家」という言葉。
「あいねこ」や「あいねこか」と読まれがちですが、実は漢字本来の読み方を踏まえると「あいびょう」や「あいびょうか」と読むのが正しいとされています。
前者は可愛がっている猫を、後者は猫を可愛がっている飼い主さんや人を指す言葉です。

怪猫

「怪猫」は「かいびょう」と読み、化け猫や猫又などといった化け物の猫を意味します。
日本では古くから怪猫に関するエピソードや絵が人々の間で注目を集めています。

なかでも当時の佐賀藩で起こった実際のお家騒動をベースとした創作怪談「鍋島猫化け騒動」は、幕末では劇化され「花嵯峨猫魔稗史(はなのさがねこまたぞうし)」という歌舞伎狂言になりました。

猫額大

「猫額大」は「びょうがくだい」と読み、土地などの面積がとても狭いことを表す言葉です。
同じような意味の表現に「猫の額」や「猫額」がありますが、どちらも猫の頭が小さいことが由来です。
土地や場所の狭さを、どこからどこまでが額なのかが分からないほど額の面積が狭い猫の頭で例えているといえるでしょう。

斑猫

「斑猫」は「はんみょう」と読み、コウチュウ目オサムシ科に属する虫のことです。
漢字のイメージから猫の模様を連想する人が多いですが、ぶち模様の猫のことではありませんよ。
昆虫であるのに「猫」という文字が使われているのには、斑猫の食性が由来とされています。
斑猫は肉食性の昆虫であり、頭部に大きな顎があります。
素早く獲物に襲い掛かり、この大顎で仕留める様子が、狩りをする猫のようであることから「猫」の字が使われているとされています。
英名でも「Tiger Beetle(=虎のように狩りをする虫)」という名前が付いていますよ。

霊猫(霊猫香)

「霊猫」の読み方は「れいびょう」であり、ジャコウネコの別名を意味します。
ジャコウネコは食肉目ジャコウネコ科の動物で、名前に「ネコ」とあるものの実際には猫と犬の中間にあたる動物であり、ハクビシンやマングースなどの仲間なんです。

ジャコウネコといえば、最高級コーヒーの一種である「コピ・ルアク」が有名ですよね。
ジャコウネコのフンから採取された未消化のコーヒー豆を使ったコーヒーで、その希少性から1杯あたり1万円以上することもありますよ。

ちなみに「霊猫香」は「れいびょうこう」と読み、ジャコウネコの香嚢から出る分泌液のこと。
この液を乾燥させると香水のムスクに似た上品な香りになり「シベット」という最高級香料として親しまれています。

猫睛石

「猫睛石」の読み方は「びょうせいせき」で宝石の一つである「クリソベリル・キャッツアイ」の別名です。
「キャッツアイ(=猫の目)」という名前の通り、光に当たると石の表面に猫の瞳を思わせる光の筋が一つ入るのが特徴です。
「キャッツアイ」という名称はさまざまな種類の宝石にも使われていますが、厳密にいえば「キャッツアイ」は宝石に現れる光学現象のことであるため「キャッツアイ」という名前の宝石はありません。

「猫」の音読みが使われる四字熟語

出典:https://www.shutterstock.com

漢字の「猫」の音読みは、中国の文献や故事成語を由来とする四字熟語を調べてみると多く使われていますよ。
ここからは「猫」の音読みが使われている四字熟語を紹介します。

窮鼠噛猫

「窮鼠噛猫」は「きゅうそごうびょう」と読み、弱者であっても追い詰められた状態になれば予期しない行動をするという意味の四字熟語です。
弱者でも必死に抵抗すれば強者に打ち勝つことができることを、猫に追い詰められたネズミが猫に噛みついて命の危機を脱する様子に例えています。

照猫画虎

「照猫画虎」の読み方は「しょうびょうがこ」。
虎の絵を描こうとして、見た目がよく似ている猫を参考にすることを意味しています。
つまり、物事の本質を理解せずに見た目だけ真似することを表す四字熟語です。
虎も猫も同じネコ科の動物ではありますが、体の大きさや活動時間の傾向、泳げるか否かなどのさまざまな違いがあります。
そのような物事の細かな違いを理解していないとして、否定的な意味で使われています。

猫鼠同眠

「猫鼠同眠」は「びょうそどうみん」と読みます。
天敵であるはずの猫とネズミが一緒に眠る姿から、本来であれば悪人を取り締まる立場の人が、悪人と結託して悪事を働くことを意味する四字熟語です。
言葉の響きから、猫とネズミが仲良く眠っている微笑ましい光景をイメージしがちですが、実際の意味はかなりダーティな四字熟語です。

狐媚猫馴

「狐媚猫馴」は「こびびょうじゅん」という読み方で、悪い心を持った臣下を例えた四字熟語です。
狐のように媚びを売り、猫のようにじゃれて親しんでくるという意味の四字熟語です。

漢字が持つ表現に触れれば、猫の魅力はさらに深まる!

出典:https://www.shutterstock.com

「猫」という漢字の読み方には、猫ならではの特徴やこれまでの歴史が詰まっているため、調べれば調べるほど猫の魅力はさらに深まっていくでしょう。
本記事で紹介した言葉以外にも「猫」の漢字が使われている表現はたくさんありますので、ぜひ調べてみてくださいね。

著者情報

西野由樹

生粋の犬好きなフリーランスWebライター。執筆のお供はコーヒーと愛犬のマルチーズ「こたろう」。
やんちゃな愛犬にちょっかいを出されつつ、今日も実体験・調査に基づいた執筆で、読んで楽しい記事づくりに勤しむ。

オススメ

新着記事