犬と季語を組み合わせた俳句を知っていますか?

著名人が詠んだ俳句の中には犬と季語が入ったものが意外と多いことをごぞんじでしょうか?犬も季節と一緒に俳句になると、なかなか、趣があるものです。犬は昔から人間の暮らしに密着した動物であることが俳句からの伺い知れます。 2019年09月06日作成

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犬が来て 水のむ音の 夜寒哉・(正岡子規)

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庭から音がしているのです。よく耳を澄ますと意味が水を飲んでいる音です。この俳句の中にある季語は「夜寒」です。どれだけの寒さなのか?というのは、この俳句から感じられます。まだまだ、暖房などが行き届かなかった時代の、冬の寒さが俳句に流れています。

犬は冬でも元気に庭で過ごすのが当たり前の時代ならではの、犬の様子です。室内犬を飼育している人には想像もできない、真冬の夜を表現した正岡子規の俳句には、とても深い静かさと、静かな夜に水を飲んでいる犬が立てる音が、聞こえてくる様子は、なんとも趣深い俳句なのです。

犬耳を 立てて土嗅ぐ 啓蟄に・(高浜虚子)

土の中で冬眠していた虫たちがそろそろ春を感じて顔を出す季節を唄った俳句です。犬がしきりに土の匂いを嗅いでいる先に居るのは、実は冬眠から起き始めた虫たちなのです。そして、急に虫が顔を出して、驚いた犬が驚いて思わず耳を立てているという様子を表現しています。

犬の習性を知っている人にとっては、無視の姿を見て、急に耳を立てて驚く滑稽な様子は、可愛らしくそして犬らしさを表現していると感じるはずです。春先を表現する「啓蟄」が季語になっています。ほんのりと春の香りが漂うような俳句は高浜虚子らしいものと、評判になったほどです。

犬が来て 覗く厨の 春の暮・(山口誓子)

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春の暮れという表現から見えてくるのは、春の柔らかい夕方です。静かな田舎の光景を描いているような雰囲気です。そこには美味しそうな夕飯の準備が始まっていることもわかります。そこに、飼い犬が匂いに誘われてひょっこりと現れるというのが俳句が描く、さりげない日常の一コマなのです。平和そのもの、という感じがします。

ここでは、季語として「春の暮」という独特な表現を用いています。春の夕暮れに、台所をのぞき込む犬の様子を描いた何気ない生活の一部ですが俳句としては、かなりの秀作です。映画のワンシーンのように山口誓子の世界観が、広がっていくのです。

草枕犬も時雨るか夜の声・(松尾芭蕉)

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旅の途中で冷たい時雨に遭うと、犬の物悲しい遠吠えが聞こえた情景は、なんとも虚無感が漂う様子です。仲間や親とはぐれた犬が時雨に打たれている様子と、旅人が孤独な時間を過ごしている様子が目に浮かぶようです。

季語は時雨ということで、季節を感じさせます。松尾芭蕉の俳句の世界にある夜の声というのは、まるで無音でそこには雨の音と犬の遠吠えだけが聞こえるという独特の世界です。暗黒のような、また物悲しい孤独感漂う俳句なのです。

古郷や犬の番する梅の花・(小林一茶)

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季語は梅でその番をする犬の様子と昔ながらの郷の様子が描かれています。きっと梅の香りがあたり一面に漂い、春の訪れを感じさせます。ここに登場する犬は、とても穏やかで番犬にするには、物足りないほどの穏やかさがあるのだと思います。

小林一茶の親しみやすさが魅力です。この俳句は誰が見ても季節やその情景が目に浮かびます。難しい俳句は読み取るのが難しいのですが、犬と梅というマッチングがとてもわかりすく、すぐに覚えられる俳句でもあります。

柿落ちて犬吠ゆる奈良の横町かな・(正岡子規)

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奈良の名産である柿を木後にして秋の奈良の様子を静かに描いている俳句です。奈良の横町に住む犬が、柿が落ちるさまに驚いて吠えているという、なんとものどかな光景が目に浮かぶようです。このような他愛もない日常を見事にとらえた季節感が漂う俳句は正岡子規らしさの象徴だと思います。

犬と季語を使った俳句の素敵さ

犬は人の暮らしに当たり前のように寄り添い、昔から良き相棒であり自然の光景に馴染む存在であったことが、多くの俳句から見えてきます。今改めて、犬と季語を意識した俳句に接すると、そのなんとも平和な雰囲気や切ない情景が心を打つものです。

著者情報

UCHINOCO編集部

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