犬のしつけを始める前に知っておきたいこと
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犬のしつけを始める前に、前提として知っておきたいことがあります。
まず、しつけはただ厳しく接する行為ではないということです。しつけは愛犬が事故に遭ったり他人へ危害を加えてしまったりするのを防ぎ、愛犬を守る手段でもあるということを覚えておきましょう。
また、しつけを行う前に「愛犬から信頼してもらうこと」も大切です。飼い主さんと犬との間に信頼関係があってこそ適切なしつけにつながることを忘れないでください。
犬のしつけで覚えておきたいルール
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犬のしつけで大切なのは、犬は自分にとってメリットがある行動を繰り返し、デメリットがある行動はしなくなるということです。つまり、無駄吠えなどの「問題行動」を繰り返し行うのも、犬にとってメリットがあるからです。
しつけの際は、問題行動をやめさせる目的で犬にデメリット(体罰・閉じ込めなど)を与えることはしない、というルールを守りましょう。問題行動を減らすには、その行動で犬が得られるメリットをなくしたり(無駄吠えをしても要求に応じない、など)、問題行動に代わる別の行動を教えたりする方法をおすすめします。
次に、ほめ方・叱り方のルールについてご説明します。犬が悪い事(人間にとって不都合な事)をした時は、その場で叱りましょう。意味があって行った行動を叱られると、犬は理不尽な思いをします。さらに、犬はあまり過去のことを覚えていない生き物なので、時間が経ってから叱られても理由がわからずに怖い思いをするだけで終わってしまいます。理不尽で怖い思いをすると、叱った飼い主さんとの信頼関係も悪化します。時間が経ってから叱られた犬が反省しているように見えることもありますが、そのほとんどは恐怖心による態度で反省ではありません。
もしもその場で叱る事ができなかった場合、犬が次に同じことをしたらどのように正しい行動に導くかを考えて準備してあげましょう。犬をほめる時も叱る時と同様で、行動の直後にほめてあげると「何に対してほめられたのか」を理解してもらいやすくなります。また、先ほどもふれたように、体罰は行わないというルールでしつけを行ってください。体罰で犬を従わせる利点よりも、犬の性格を曲げてしまったり、人間に対する恐怖心から犬が攻撃的になってしまったりするというマイナス面の方が大きいことを知っておきましょう。
犬のしつけと訓練の基本
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しつけと訓練は同じように使われている言葉ですが少しだけ意味が違います。
しつけとは、犬が人間社会で幸せに生きていくためのルールを教える作業です。
それに対して訓練は、「おすわり」や「ふせ」のように犬に動作行動(トリック)を教える作業です。どちらも犬と飼い主さんとの信頼関係を構築する上で重要な作業です。
基本のしつけ3つ
はじめに、基本となるしつけを3つご紹介します。
1.アイコンタクト
意思疎通の第一歩・アイコンタクトは、誰の言うことを聞けばよいのかを犬に教える作業です。
アイコンタクトのできる犬は、飼い主さんの目を見て指示を待ちます。例えば、道に落ちている食べ物を勝手に食べず、まずは飼い主さんの判断を仰ぐようになります。
アイコンタクトを教えるには、犬が目を合わせて来たらすかさずほめる、飼い主さんの顔の高さにフードなどのご褒美を見せて犬の視線を誘導するなどの方法があります。
2.スキンシップ
スキンシップは、犬に意思を伝えたり、犬の異常に気付いたりするための手段です。
スキンシップを取る時はできるだけ体の隅々まで触れ、犬が喜ぶ部位が増えるようになでてあげましょう。個体差はありますが、足先などの末端は犬が苦手な部分です。
3.リラックス
いつでもどこでもリラックスできる犬は、ストレスを抱えにくくなります。
たくさん遊んだ後などに、手の温度を伝えるようになでながらリラックスを教えてあげましょう。犬が興奮しないように優しくゆっくりとなでることがポイントです。
基本の訓練3つ
次に、基本となる静止系の訓練3つをご紹介します。
1.「おすわり」
「おすわり」は、犬の安全を守る時に役立ちます。散歩中に首輪が抜けたり他の犬とトラブルになりかけたりしても「おすわり」の一言でその後の行動を抑止でき、犬が一呼吸おいてクールダウンすることもできます。
「おすわり」は犬が取りやすい姿勢です。犬自身が自然に行っている時に「おすわり」と声かけをし、「この姿勢は『おすわり』というんだ」と教えましょう。フードで誘導する方法も有効です。
2.「ふせ」
「おすわり」の次は「ふせ」に挑戦してみましょう。
「おすわり」の姿勢からフードを斜め下に持っていき、「ふせ」の姿勢へ誘導します。「おすわり」と同様、犬が自然にふせの姿勢になった時に「ふせ」と声をかけると早く学習してくれます。
3.「まて」
「まて」を教える前に、何に対していつまで「まて」をさせるのか飼い主さんが決めてください。例えば、食事の前の「まて」であればフードボールに口をつけるまで、などです。
「まて」と声をかけ、決めた「まて」がごく短い時間でもできたら「よし」と解除して褒めてあげましょう。「まて」という言葉の意味を犬に理解させるため、最初は我慢をさせないようにします。
決めた「まて」が崩れる前に、きちんとほめることができるタイミングで「よし」を出して成功体験を積んでいきます。犬が言葉の意味を理解したら「よし」までの時間をのばしていきましょう。
訓練前のアイコンタクト心がけると成功率が上がりやすくなります。また、毎回の訓練を失敗で終わらせず、成功で終わらせることも定着への近道です。
犬の日常生活で必須のしつけ
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続いて、愛犬と日常生活を送るときに必須となるしつけをポイントや注意点とともにご紹介します。
食事のしつけ
犬がむやみに食べ物を欲しがらないよう、食事は量・回数を決めて与えます。訓練やしつけのご褒美に使うおやつも1日の食事量(総摂取カロリー)の中から用意します。
犬は時間感覚が優れているので、食事の時間を厳格に決めるとイレギュラーな事態に対応できず、無駄吠えなどの要求行動をすることがあります。時間は大雑把で構いません。
基本の訓練をマスターしたら、「おすわり」と「まて」をさせ、「よし」の合図で食べ始めるなど、食事のルールを決めるのも良いでしょう。
トイレのしつけ
食事の後、水を飲んだ後など、犬がトイレに行きたくなるようなタイミングでトイレに連れて行き、そこで排泄ができたらほめてあげましょう。
もしトイレではない場所で排泄してしまっても、叱ったり騒いだりしないことがポイントです。「排泄をする=叱られる・騒がれる」と犬が勘違いし、トイレのしつけが難しくなることがあります。犬がトイレに失敗したら静かに淡々と片付け、成功したら大袈裟なぐらいほめてあげてください。
散歩のしつけ
犬を外に連れ出す前に、まずは家の中で首輪・リード・ハーネスなどの感触に慣れさせ、つけて歩く練習をしてみましょう。
散歩に出たら、飼い主さんを引っ張らないことを教えます。引っ張られそうになったらやさしくリードを引き、飼い主さんの近くへ誘導するようにします。
また、散歩中・外出中に他の人や犬に吠えたり近寄ったりしないよう、アイコンタクトや「おすわり」「ふせ」「まて」でコントロールしてあげましょう。
犬の生活で必要に応じて行いたいしつけ
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日常生活の中で必要に応じて行いたいのは以下のようなしつけです。
ハウスのしつけ
犬に小屋・クレート・ケージなどに入っておとなしくしているよう指示する「ハウス」のしつけは、来客時や移動時、緊急時などに役立ちます。教える際には、「ハウスが嫌な場所だと犬に思わせない」という点に注意しましょう。
他のしつけの罰としてハウスへ閉じ込めたり、ハウスが不潔だったりすると、犬は進んでハウスに入ってくれなくなります。おやつなどを使って誘導しながらハウスに慣れさせ、安心・安全な場所だと教えてあげましょう。
留守番のしつけ
留守番のしつけは、「飼い主は必ず戻ってくる」ということを犬に理解させてから行ってください。初めは数分程度、犬から見えない場所に姿を隠して様子をみます。徐々にその時間を長くしていき、犬が1人でお留守番できるようになればOKです。慣れるまではおもちゃやおやつを使ったり、おとなしく過ごせたらほめてあげたりしましょう。
犬は「飼い主がこの行動をしたらお留守番が始まる」とすぐに学習します。そのため、「飼い主がテレビを消したら居なくなる」と思い込んでいる犬に留守番をさせる場合は、テレビを消さずに出かけると不安の軽減につながります。
犬だけで留守番をさせるのが心配であれば、webカメラなどを利用して留守中の犬の様子を観察する方法もあります。
犬の行動・クセに関するしつけ
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次のような犬のクセや行動は、しつけをしてやめさせることを検討しましょう。
噛む
人やものを噛んでしまう犬には、噛んで良いおもちゃを与えると噛みグセがおさまるケースがあります。
飼い主さんを噛む犬には「噛まれたら痛い」ということをストレートに伝えましょう。遊び中の甘噛みには「痛い」と一言伝えて遊びを中断し、「これ以上の力で噛んだら楽しい事は終わるんだ」と学習させるのも有効です。
歯が生え替わる時期特有のむずむず感で何かを噛んでしまう犬には、歯固めに役立つおもちゃなどを用意してあげましょう
吠える
吠える犬には、吠えても要求が通らないことを態度で教える必要があります。おねだりで吠えられても要求に応えないようにしましょう。
しかし、ただのおねだりやわがままで吠えているのではない場合(体調が悪い、特定の状況にストレスを感じているなど)もあるため、まずは犬が吠える理由を考えることが解決への近道といえます。
飛びついてくる
飛びついてくる犬の多くは興奮状態です。そのため、飛びつかれる前に「おすわり」をさせる訓練を行いましょう。飛びつかれてもOKな飼い主さんであれば、飛びついても良い相手やタイミングをしっかり覚えさせるのも良い方法です。
また、飛びつくことを訓練のご褒美にすることもできます。「おすわり」ができたら「よし」の合図で飛びついても良いというルールを作ると、犬へのご褒美が一つ増えます。
犬のしつけがうまくいかないときは?
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では、犬のしつけがうまくいかないときはどうすれば良いのでしょうか?焦りや苛立ちを感じるかもしれませんが、犬にきつく当たることはやめましょう。人間と同じく犬にも個体差があり、どの犬もスムーズにしつけができるとは限りません。自分たちなりのペースで良いのだと考え、犬と一緒に取り組む気持ちで根気よく進めてください。
たとえば、「他者への攻撃性が高い犬にはトイレのしつけを後回しにし、しばらくはオムツで過ごさせて不安を取り除いてあげた」という方法でうまくいった例などもあります。
どうしてもしつけがうまくいかない、良い方法がわからないというときは、専門知識を持ったドッグトレーナーに頼るのもひとつの選択肢です。
犬を必ずこの順番でしつけなければいけない、ということはありません。一つ一つの行動に優先順位をつけ、早めに教えなければいけないものからゆっくりゆっくり教えていきましょう。
上手にしつけをして犬との絆を深めよう
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犬を飼うのであれば、しつけが必要です。しつけのルールや内容を飼い主さんが正しく把握しておくことは、愛犬を守ったり、愛犬と信頼関係を強めたりするためにも大切です。自分たちに合ったペースで適切なしつけをし、愛犬との絆をさらに深めてくださいね。
公益社団法人 日本警察犬協会公認 南大阪警察犬・愛犬訓練所(参照日:2020-01-23)
http://www.minamiosaka-dogts.jp/advice/bark
公益社団法人 日本警察犬協会公認 南大阪警察犬・愛犬訓練所(参照日:2020-01-23)
http://www.minamiosaka-dogts.jp/advice/praise/
公益社団法人 滋賀県獣医師会(参照日:2020-01-23)
http://www.shigavet.com/04_pets/guardian.html
しらかば動物病院(参照日:2020-01-23)
http://funabashi-animal.com/puppy/%e5%a4%9c%e9%b3%b4%e3%81%8d.html
長谷川動物病院(参照日:2020-01-23)
https://hasegawa-ac.jimdofree.com/2019/01/24/%E5%95%8F%E9%A1%8C%E8%A1%8C%E5%8B%95%E6%B2%BB%E7%99%82/
さいわい動物病院(参照日:2020-01-23)
http://www.saiwai-doubutu.com/breeding
株式会社日本ペットシッターサービスHP(参照日:2020-01-23)
https://www.pet-ss.com/blog/dog03/
◆特定非営利活動法人 家庭犬しつけ協会(参照日:2020-01-23)
https://dogly.jp/training/walk.html
著者情報
東田崇史
農芸高校資源動物科卒業。教育や福祉の業界に身を置いていたが動物への想いが捨てきれずにドッグカフェへ転職。カフェマスター兼しつけ相談員として勤務後2019年トレーニングスクール福路開業。 夢は動物の保護施設を作りそこで命と向き合う動物介在教育施設を作る事。2級愛玩動物飼養管理士、ドッグトレーニングアドバイザー資格保有。