1. 「ペットのためのアロマテラピー」ってどんなもの?
「アロマテラピー」というと、良い香りで癒されるものだったり、マッサージをするためのオイルとして使われるものを想像されることが多いでしょう。しかし、ペットのためのアロマテラピーとは、「メディカルアロマテラピー」と呼ばれるもので、ヨーロッパでは医師が治療として行い、発展してきたものを指します。
「一般的なアロマテラピーがイギリス式なのに対し、メディカルアロマテラピーはフランス式、またはベルギー式と呼ばれるものです。精油の性能を使い、体そのものに作用させていく“治療”です。ヨーロッパでは、人間に対しても行われており、そのための精油は薬局などでも販売されているほど、広く知られています」(森先生)
お薬を飲んだり、注射をしたりという西洋医学とはまた違ったアプローチで、体の不調を緩和したり、予防する効果があるのです。
2. どのような症状に効果的なの?
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では、メディカルアロマテラピーは、どのような症状のペットたちに有効なのでしょうか。
「精油には、いろいろな種類があり、成分もそれぞれです。そのため、いろいろな症状に効果を発揮しますが、特に効果がわかりやすいのは、皮膚に関するトラブルです。
皮膚のかゆみや炎症、傷ややけどの治療には非常に効果的です。
また、筋肉痛や関節痛、消化器症状や呼吸器症状などを伴う感染症にも有効です。お薬を飲むような感覚で、症状に合わせて精油を選んで使います。
もちろん、お薬を減らしたり、ツライ症状を和らげるために使うこともあります。予防やお家でできる手当という使い方をおすすめしています」(森先生)
さらに、人間がアロマを楽しむように、香りを楽しむことでリラックス効果も期待できます。留守番で不安を強く感じる子などには、好きな香りを炊いてあげることで、安心感を与えることもできます。
3. メディカルアロマテラピーのやり方とは?
具体的には、メディカルアロマテラピーとは、どのような施術を行うのでしょうか?
「香りを嗅ぐだけでなく、皮膚に直接塗ったり、飲んだりすることで、精油の成分によって、症状の改善を促すのがメディカルアロマテラピーです。
例えば、皮膚炎のために皮膚に直接塗り込む場合には、精油原液ではなく、オイルやジェル、クリームなどを加え、化粧品を作るようなイメージで生成します。
風邪などの感染症の場合には、食用のオリーブオイルに精油を混ぜ、飲みやすくするために蜂蜜を少し入れてシロップのような液体にしてペットたちに飲ませます。
また、飲み水に混ぜることも可能です」(森先生)
これら施術は、症状に合わせて、毎日行う場合もあれば、症状が治るまでの場合もあります。
4. 病院に行くべき症状との見分け方
メディカルアロマテラピーは、皮膚炎や風邪などの感染症に効果を発揮します。しかし、当然ながら、獣医にかかり、西洋医学的観点から治療をしなければならない場合もあります。では、病院に行くべきか、メディカルアロマテラピーを施し症状の改善を待つべきか、その判断基準はどこにあるのでしょうか。
「例えば、切り傷でいえば、自然治癒でも治る程度の軽いものは、メディカルアロマテラピーでの施術で良いと思います。しかし、縫わないといけないほどの大きな傷の場合には、動物病院に行き、適切な治療を行う必要があります。
明確な基準はありませんが、アロマを使ってみたけれども症状が治らない場合には病院に行くべきですし、獣医師と相談の上で、状態を見ながらアロマを使うのが良いと、私は考えています。
また、アロマは、手術の後に傷の治りを早めたり、痛みを抑えるたりと、術後ケアにも効果を発揮します。西洋医学とうまく組み合わせて使うのがベストです」(森先生)
森 美幸
子供の頃から動物好きで、獣医師を目指し岐阜大学に進学。
念願の獣医師免許取得後、岐阜県・大阪府・兵庫県の動物病院に勤務。
診断業務に従事する中で、人とのコミュニケーションの共感を覚え、メディカルアロマアドバイザー、リンパリファインセラピストの資格を取得。
「やすらぎの森 ルーエ」を2014年に設立、ペットと飼い主さまのセラピーを提供。
現在、フリーランス獣医師として、東京都の動物病院にて診療。
また、しつけ教室、パピーパーティなども開催。
著者情報
UCHINOCO編集部
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